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ch.22 (R-18)

帰宅すると、母さんと妹がいて、父さんは出かけていていなかった。 母さんに検査結果を報告して、先生のクリニックでゆっくり休ませてもらったこと、今日はブランチを奢ってもらったから少し遅くなったと言うと、母さんは「随分親切にしてもらったのね、お礼の電話をしておくわ」と露ほども疑わなかった。 嘘をついたことに罪悪感はなかった。それより、先生がすっかり信用されているらしいことを知れば、ますます僕らのことは知られまいという決意が強くなった。 「クリニックは平日しかやってないから、明日でいいよ」と答えると、「昨日電話をもらったから、着信履歴にスマホの番号があるわ」と言われた。 「それでも、休みじゃなくて平日のほうがいいよ」と答えた僕は、自分の部屋に籠もって、先生が買ってくれたスタバのフードを食べた。 先生と僕は、スマホの連絡先を交換していなかった。僕らの関係を考えれば、交換するのが当たり前かもしれない。けど僕は、会いたければクリニックに行けばいいと思っていた節があるし、何より、彼にかまけて勉強が疎かになり、志望大学に行けないなんてことがあってはマズいという懸念があった。なぜなら、両親に打ち明けても問題がないと思う最短の目処は、志望大学への進学確定後だと考えていたからだ。 そして先生も、僕の連絡先を聞こうとしなかった理由はわからない。けれど、僕が少なくとも毎月1度はクリニックに行くことがわかっていただろうし、あくまでも推測だけど、頻繁に連絡を取り合わないことが彼にとって好ましいか、僕らにとっていいことだと考えているのかもしれないと思った。 その日、家の中は、いつもの休日と何も変わらなかった。 だけど僕は、昨日までとは圧倒的に変わってしまった。夜、ベッドに入るまで、体は怠く、頭はぼーっとして、どこか夢見心地でフワフワしていた。何より、股関節が痛く、あそこに違和感があって、まだ熱を孕んでいるような感じもしていた。女性がセックスをした後は、いつもこんな感じなんだろうかと思うと少し不安になったけど、休めばいいと思ってダラダラしていた。そして、疲れもあったのか、ベッドに入り、先生とのことを思い返して、幸せな気持ちに浸っている間に寝てしまった。 この日僕は、ジョセイキでのオナニーを覚えてから初めて、オナニーをしなかった。 翌日の日曜日も、家は、いつもの休日と変わらなかった。 起きたのは昼前だったけど、昨日の僕の“不調”を知っていた家族からは、「昨日より顔色がよくなったね」と労られただけだった。実際、昨日に比べたら体はだいぶ軽くなり、色惚けだったと思うぼんやりした感じもスッキリしていた。 そして昼過ぎ。 ちょっとした買い物に出ようと思い立って、シャワーを浴びにバスルームに入った。特に何も考えず、普段通りボディソープを泡立てた手で体を擦っていた時だった。肩から腕を洗い、脇を洗い、胸を洗い始めて、たまたま指の腹が乳首に引っかかった。その瞬間、体に触れられた感触や、「乳首でオナニーしろ」と言う先生の声や、体温や、あの夜から朝の一部始終が脳裏によぎった。 「…っ!」 思わずタイルの床にしゃがみこんだ僕は、そのまま突き動かされるようにして、シャワーの下でオナニーを始めていた。 これまでも、シャワーついでにペニスで自慰をしたことはあった。けれど、今は、頭と体が覚えている甘い記憶を追うことしか頭になかった。 ソープで泡立てた指で、乳首を軽く撫でるだけでため息が漏れる。先生の指がしたように、擦ったり揉んだり、少しずつ強く摘んでいくと、ぬるぬると滑る感触も相まって、あっけないほど股間が熱くなった。 「ぁ、せんせ…」 無心で捏ね回しているうちに声が漏れ、彼を呼んでいた。目を閉じて声を殺し、後ろから彼にされていると想像すれば、これまでよりリアルな自慰に容易く没頭できてしまう。脚の間で渦巻く尿意に似た衝動を解放したくて、指に力を込める。耳を食む先生が、『乳首でいくおまんこ、ちゃんと見て』と囁く。 「…ッ…せんせッ……!」 壁にもたれ、股間を突き出して、達した快楽に悶絶する。跳ねたペニスから精液がこぼれ、プッシーがひくひくと収縮していた。 「っハ……ハァ……ア…ッハ…」 声を出せない分、快感を貪りたい衝動が募る。左手でペニスを慰め、右手でクリを突けば、滑る指先だけで痺れるような快感が生まれた。 「ッぐ…!」 慌ててペニスから外した指を、熱く滾るプッシーに移動する。今になって、彼が積極的に僕のペニスをイカさなかったのは、一度イッたら、しばらくの間、昂奮が落ち着いてしまうからだろうと思い当たる。だから、積極的にジョセイキで気持ちよくならなくちゃ。指で探った膣口は、熱い愛液で濡れている。ソープはよくない気がして指の泡を洗い流し、焦れるカラダの奥に挿し込んだ。 気持ちいいトコロをより具体的に“教えられた”今となっては、酷く物足りない気がしてしまう。前側の肉の凸凹をどんなに指で擦っても、先生の指がしたように動かしても、彼の指やペニスに擦られる快感には遠く及ばない。そして、彼のペニスが愛撫した奥に、指は届かない。 「せん、せ、ぇ…」 足りない分、クリと小陰唇を強く捏ね回して、夢中で膣をほじり続ける。先生じゃなきゃと、必死で彼を呼ぶ。すらりと伸びたカリ高のペニスが、僕を探る。滑らかな亀頭がねじ込まれて、僕の粘膜を拡げながら、吸いつくように僕を満たしていく。そして、僕の真奥に沈み切ったペニスが脈動して、精液を、放つ。 「ん……う……っ……ッッ!」 絶頂に貫かれて、のけぞった。腹に倒れたペニスからだらりと精液が零れ落ちる。膣が指を痛いほど締め付けて、先生をほしがっていた。エクスタシーに慄く体を起こしていられず、床に転がった。喘ぎながら、先生のペニスを思い出す。彼がゴムをつけないのは、僕のカラダを知っているからに違いない。僕の中で注がれた精液はどこにいったんだろう?一昨日、行為の後で、シャワーを浴びた時に出てきた記憶はない。膣から抜いた指を恐る恐る嗅いでみても、僕の知る愛液のニオイしかしなく、どこにいったんだろうと不安になる。それはともかく、婦人科医のくせにゴムをつけないなんて、と思う。それでも僕は、カラダの中に彼の精液が残されたという罪深くエロティックな事実に昂奮を覚えて、今夜にでも、また、彼とファックしたいと強烈に思った。 その後、行くつもりだった買い物をやめた僕は、部屋に籠もって悶々としていた。 今になって、先生と連絡先を交換していないことがあまりにも悔やまれて仕方なかった。せめて、声だけでも聞きたい。スマホならビデオ通話もできる、けれど、それをしたら歯止めが効かなくなってしまうんじゃないか。第一、彼は僕の連絡先を知ろうとしなかったんだから、勝手に連絡しないほうがいい…。 なんとか恋焦がれる胸を抑え込んだ僕は、家電の彼の着信履歴を見ることはしなかった。 そして翌日の月曜日、いてもたってもいられずクリニックに電話をかけた。次の予約は、その週の金曜日に取れた。

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