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ch.35 (R-18)

ベッドの真ん中で縺れ合って、いつまでも口付けに溺れている。ずっと前に服を脱がし合って、絡めた四肢で擦り付ける体はとっくに熱を帯びているのに、それでも口付けをやめられなかった。 ついに体を離した彼が、赤く染まった僕の体を眺めて「酔ったの?」と笑う。 「酔ったよ」と喘いで、彼の背を引き寄せる。 「君は僕のものだよ」 囁く声は甘く、僕の体の中を細波(さざなみ)みたいに広がって、ぞくぞくと体を震わせた僕は、張り詰めたペニスで彼の腹を突いた。 「あれっく、きてーーー」 「待ってて…」 彼は僕の足元に這いつくばり、左の爪先にキスをした。 「あ…」 まるで恭しく掲げるように足首を持って、一本一本、足の指に順に口付け、口に含んで吸って、優しく噛んで、足の裏を舐め下ろして、踵に、くるぶしにキスをする。そして、右足も同様に。 体をよじり、脚を開いて、浮かせた腰をくねらせて彼を呼んでも、彼はうっとりと僕を見据えて、つれなく脛に舌を這わせている。 彼の舌が僕の脚をくまなく濡らして、ふくらはぎを揉みしだいて、膝に口付けて、腿の内側に歯形と痣を残して、腿の外を強い力で撫で摩(さす)る頃、もう僕は、焦れきった肉の襞を自ら広げて、彼を乞うことしかできない。 「…おねがい、あれっく…」 「…いっぱい垂れて、シーツが汚れてる」 観察するように、丁寧に溝の隅々までなぞる視線に犯される快感に喘ぐ。 「…がまん、できなくてっ、ごめんなさい…」 「待たせて、ごめん」 高揚が滲む吐息の熱さに、僕の吐息も震え上がる。そして、念願の口付けに吸い込まれた僕は、気が狂いそうな快感にのけぞった。 「…ッぐっ…あああ、あああっ…いいっ、きもちっ、イ……あ、あ…ッ」 下品に喘いで、彼の口に股を擦り付ければ、彼もめちゃくちゃに僕を舐って、吸って、はしたない僕をねじ伏せてくれる。 「あ、あ、あれっく…」 僕のそこを広げた手に、彼が手を重ねて、僕の中に挿し込んだ舌で衝動を啜り取っていく。 「あ、あ、あ、あ…」 激しい絶頂に昇りつめて、僕の精液が胸に飛び散った。 朦朧とした意識の中で、萎えたペニスを咥えた彼が、口の中で何かを呟きながら僕をしごくのを感じている。やがて海綿に血が巡り、彼の喉を突き上げると、彼は唇を僕の下腹部に落とし、再び僕の体を這い上がり始めた。脚にしていたように、静かに、ゆっくりと。へそから腹、鳩尾、胸へと丁寧な愛撫が辿り、痕を残して、彼の匂いに染めながら、僕は彼のものになっていく。 「ウィル…」 乳首を舐り、脇を嗅いで、鎖骨を啄み、首を食んで、ついに彼が辿り着く。 ぴたりと重ねた顔と体で見つめ合う僕らは、まるで初めてするみたいに少し照れて、そして笑った。 「…あれっく」 「…ウィル」 彼の背を抱いて、何度目かわからない口付けを求めた時、彼が僕の中に潜り込んで、息まで奪われた僕は、彼とひとつになった悦びに全身が戦慄(わなな)いた。 汗に濡れた肌の熱さと、絡めた指の強さと、囁く名前の愛しさと、淫らな吐息と、呻くような喘ぎ声と、擦れる粘膜が溶け合っていく快感を、途切れ途切れの意識が拾っていた。 「あ…あ………あ…あ……あ…あ………あ…あ…」 彼と真奥で交わるたびに、声が漏れる。彼が中をじゅっと滑り、ぐちっとめり込む音が体に響く。ばちばちと腰をぶつけながら、卑猥な音に翻弄されたカラダは、みちみちと彼を締めて、絞り上げている。 まるで操り人形みたいに、彼の上で、抱き締めあって、横になって、四つ這いや膝立ちで後ろから、流れるように体位を変えながら繋がっていた。どんな形で交わっていても、絶え間のない快感に崩れ落ちても、手を伸ばせば手を繋げて、名前を呼べばキスができた。 いつの間にか、蕩けきった僕の奥は、彼に突かれるたびに昇天を繰り返して、甘美な快楽が体を満たし始めていた。 「…あれっ、く…ッ……ッ」 息も絶え絶えに彼を呼ぶと、背後にいた彼が僕を泳いで、最初にそうしたように、僕にぴたりと体を重ねた。 「…ウィル」 見たことがないほど怖くて、苦しくて、そして優しく幸せな顔が僕を覗いていた。 僕の頭を抱いて、腰を抱いて、体ごと腰を擦(なす)り付ける彼の呼吸が上がっていく。 「…あれっく、あれっく…っ」 僕の口元で、喘ぐ口が笑っている。僕の中で、愛する男が一層硬さを増して膨らんでいく。 「…愛してる」 「ッ……………ーーーーーー」 天国に放り出されたのか、滑り堕ちたのか、息も心臓も止まった気がした。 僕の深いところで何度も脈打つ彼を確かめていた意識は、すぐに白い恍惚に塗りつぶされた。 枕元のランプが、ぼんやりと彼を照らしていた。 額に落ちた汗に濡れた毛束に触れると、冷たかった。白いまぶたに触れてみると、気怠く開いた瞳が僕を探して、うっとり笑った。 「…おこした…?」 「…起きてた」 「…ん」 そうするのが当たり前みたいに抱き合って、疲れた体を擦り付けている僕らは、きっと今、世界で一番幸せだった。 「…あれっく…」 「ん?」 「…どうして、きょう、ヘンタイじゃなかった?」 僕の端的な言葉に、彼はクスリとした。 「そういう気分だった」 「…しあわせ、だった」 彼は何かを口にしかけて、僕を強く抱き直した。 密やかなため息に、言葉にしきれないものが溶け出していた。 「…今日買ったテーブルランプ、そこに置こうと思ってた」 「…あの、ランタンみたいなランプ?」 「そう」 「…どうして、かえるの?」 「君がいるなら、もっと部屋に暖かみがあるほうがいい」 「…いま、かえる?」 「明日でいいよ」 尻を撫でる手が気持ちよくて、彼に脚をかけて体をなすった。肌をくすぐる体毛も気持ちよくて、満足したはずのあそこにぽつりと火が灯った。 「……いつか、ひとりぐらし、したらって、かんがえた」 「うん」 「…あれっくがちかくにいたら、いいなって…」 「…一緒に住む?」 彼からそんなことを言い出すなんて。嬉しくて、胸がいっぱいになる。 「……いいの?」 「だめなの?」 「…わかんない…でも、できたら、うれしい」 「…あっち、向いて」 彼の腕の中で寝返りを打つと、後ろからがんじがらめにされた。胸を撫で回す手が股間に向かい、僕のペニスをさすった。 「脚、上げて」 尻の溝を、硬さを取り戻した亀頭が滑っている。 「…ぃやだ、もう、いっぱい、いったから…」 脚を上げると、彼の指がそこに潜って、またこぼれ出していたぬるぬるを塗り広げた。 「あ…」 「…君のココは底なし?」 上げた脚を抱えられ、大きく開いたそこにするするとペニスが埋め込まれる。 「…んッ……あ……」 収まりかけていた微熱がじんと目覚めて、揺らした腰で咥え込んだ彼を柔らかくしごいた。 「…ダメだよ、こうしてるだけ」 僕の中にペニスを深く沈めたまま、腰を揺らさない彼がもどかしい。 「…ウィル」 振り返って、伸ばした舌を結んだ。クリを剥き出した指が、とろみを絡めて擦り始める。 「ア……あ………あアッ…」 10度も擦らないうちに達した僕は、彼を強く強く締め付けた。 「んっ…ぐっ……あっ…あっ…」 「…きもちいい…おやすみ、ウィル…」 耳を食む囁きが、強いエクスタシーに痺れた体を慰撫していた。カラダに収めたままの彼の熱が、腰の底から体の隅々へと広がっていく。 恍惚の余韻に飲まれた僕は、そのまま意識を眠りの中へと溶かした。

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