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第10話
ショウは笑顔でキタノに近づく。
キタノは知らない誰かが近寄ってきたような顔しかしなかった。
怪訝そうな顔。
それ以上以下でもない。
ショウが近くにいるのに。
アルファに近づくことは兄が絶対にゆるさないが、ベータ達でさえ美しいオメガに近寄られるとおかしくなるのをショウはよくよく知っていた。
男とも女とも違う、オメガ。
その性的な魅力は男よりも女よりも上なのだ。
何故なら、オメガは優秀なアルファためのものだから。
「誰?」
この前、スケッチを覗いて、顔を合わせたのに、ショウの瞳を見たのに、キタノは言った。
ショウの目を見て、おかしくならないベータの男も女もいないのだ。
ショウはベータの女には優しい。
女はオメガと似た社会的な不利益があるからだ。
だがベータの男はおもちゃだと思っている。
自分の好きなように使えるおもちゃだ。
だが。
だが。
そのおもちゃがこんな反応を見せたことが気に入らなかった。
「覚えてない?」
まさか思って聞くと、キタノは素直に頷く。
許せなかった。
おもちゃの分際が。
ショウは今日、カイをこのベータに犯させるつもりだったのだ。
その後で少しくらいこのベータを口か舌でイカせてやれば良いだろうと。
不思議なことに最期まで抱きたがるベータはすくない。
何故なら、手や口だけで、ベータは泣き叫び許しをこうからだ。
オメガに【抱かれる】ことは快楽以上に恐ろしいと知っているのだ。
最初から、それでも最後までしたがったのはカイ位だ。
カイはその為ならどんな屈辱にも耐える、可愛いペットだ。
とにかくキタノの態度にショウは傷ついた。
とても傷ついた。
おもちゃごときにこんな態度をとられるなんて。
だが、わかってないだけかもしれないと思った。
ベータのオトコの先輩に入れあげてるらしい。
そんなオトコとするセックスより、オメガとのセックスの凄さを知れば気が変わる。
そこでショウは本気になった。
このベータを陥す、と。
「そう?ボクは知ってる。友達になりたい」
ショウは妖しく見上げた。
この視線だけで、とんなベータも堕ちた
「いや、知らない人だし」
実に普通の声色でことわられた。
しかも、少し嫌そうに。
ショウのプライドがズタズタにされる。
なんだ。
なんだ、このベータは!!
立ち尽くすショウにキタノは振り返りもしなかった。
ショウは怒りに震えていた
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