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第12話

キタノがどうしても気に入らないから気になる。 ショウはイライラしてた。 カイで八つ当たりして気は晴れたけれども。 やはりキタノだ。 キタノ。 ショウはキタノが欲しかった。 ショウの言いなりになってカイを犯させたかった。 言う通りにカイを犯せたらなら、褒めてキスしてやるのだ。 カイを突き上げているキタノにキスする妄想は、オナニーなんて久々にするほど楽しかった。 キタノだったら2人だけでしてもいい。 あの超然とした顔が、ショウの指や舌に狂って泣きじゃくり、「何でもします」と言うのが聞きたかった。 嵌めてってショウの中でイカせてやってもいい。 そこまでしてやったのはおもちゃのベータでもそれ程いない。 カイ位の犠牲を払わないとしてやらないからだ。 「公衆便所」とされたカイがどんな扱いを受けているかも知ってる。 それでもショウのためにそこまでするカイはだからこそとても可愛い。 だけどキタノならそれを免除してやってもいい。 そう思う程、キタノがほしかった。 だが、キタノのガードは硬かった。 と言うより、本当に誰にも興味がない。 誰にでも優しく親しいが、それはその反面、相手に興味がないのだと思い知らされた。 話しかけたならにこやかに応える。 ショウが色々、距離を詰めようとしたら、はっきりと線を引かれる。 絶対に踏み込ませてこない線がある。 「悪い。オレは好きな人がいてそういうの困るんで」 ニコニコとした顔で言われた。 腕に伸ばした手をそっと払われて。 周りの人間もショウも真っ青になった。 男を従わせる女王蜂のショウをいとも簡単に切り捨てたのだ。 ショウはプライドを傷つけられ、ガタガタ震えた。 ショウに腕を掴まれたり、ショウに顔を寄せられて、嫌がる男などこの世界にいてはいけないからだ。 そのくせ、キタノはただ一人の人間からのメッセージや電話には明らかに固執しているのがをわかる。 授業中はもちろん携帯禁止なのだが、キタノはあきらかに誰かからのメッセージには確実にそれを破る。 こればかりは邪魔すると狂犬みたいになるので、先生達も諦めている。 メッセージを見て返信するだけだし、何よりキタノは。 良いヤツなのだ。 恋に狂ってるだけの。 ショウは納得が行かない。 行かないから、キタノに絡むが相手にされない。 でも絡む。 でもそして。 とうとう自分もスケッチブックをもってグラウンドの選手をスケッチするキタノの隣りで描き始めた。 これならキタノに「用がないならもういいでしょ?オレ描きたいんで」と言われても大丈夫。 絵は好きだ。 美大を目指してるし。 絵はいい。 描いてる時は誰もショウを支配しない。 それに何かしらキタノを攻略するキッカケになるかもしれないし。 グラウンドの風景を描き始めたショウにしばらくして、キタノが言った。 「へぇ。良いね」 キタノが笑った。 ショウではなくショウの絵を見て。 それまで見せてた、人当たりの良さそうな笑顔ではなく、いたずらっぽい笑顔で。 だからショウは。 ショウは。 キタノを諦めることが出来なくなってしまった。

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