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第19話

兄は消えた。 アルファの世界は厳しい。 番にすることの出来ないオメガを自分のモノにしてたアルファは許されることではない。 兄は二度と帰ってくることは無いだろう。 ショウは喜んだ。 キタノを手に入れなかった傷は傷んだ。 だが。 発情期になってただのオメガとしてただのアルファとなった兄に抱かれてみて思った。 誰でも同じだ キタノじゃないなら。 じゃあ誰でもよいからアルファをさがすかと。 まあ、兄から犯かされていたオメガなのはもう知れ渡ってしまっている。 確かに相手をさがすのは大変かも。 だが。 ワケありのアルファだっている訳で。 最初のオメガを失ったアルファの、2番目の番を目指すのもよい。 やりようはある。 とにかく、兄がいない生活はたまらなく幸せだった。 両親とも家族の真似をしなくて良くなって最高だった。 美大は辞めた。 絵は好きで描いてるだけで、画家になりたかったことなどない。 キタノが手に入らないなら行かない。 ショウは人生を取り戻していた。 ショウにしてみれば、大勢の前で犯されたことなど、自由になれたことにくらべたならどうでも良かった。 秘密にして犯される毎日の方が辛かった。 自由は良かった。 たとえ、キタノのことを考えたなら、泣けても。 アルファとのマッチングをしよう。 自分を愛させてやろう。 それも悪くない。 そう思い始めていた。 でも。 ショウはすっかり忘れていた。 カイのことを。

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