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第7話
ともくんをずっと忘れられないでいる罪悪感で誰にも言えなかった出来事をなぜだかともくんには話せてしまった
数年前…
いつもは気にならない夫のスマホからメッセージアプリの通知音が響いた。
それまで一度も触れたことのない夫のスマホ。子供だって触れさせたことはないしそもそも触れることもない。それなのにその日は何故か子供が触れてしまって…
「ねぇ。しーくん。これ父さん浮気じゃね?」
「へ?そんなはず…」
言われて目を向ける。画面にロックはかかってたけど内容は通知画面で確認ができた。そこにはハートマークがいっぱいのメッセージが届いていた
『この間は旅行連れて行ってくれてありがとう♡楽しかったね♡今度はまた違うところに行こうね♡』
見た瞬間思わず固まった。まさか相手が俺もよく知る人なんて…
「きみさんだ…」
僕のつぶやきは幸い子供には聞こえなかったみたいだ。きみさんの子とうちの子は仲がいいから気不味くなったらやだなぁって思ってたから少しホッとした
その時風呂から上がった夫は出会ってから初めて俺に声を荒らげた。
「勝手にいじるなって出会った頃から言ってただろ!」
それに驚いてたら今度は子供が大声を上げた。
「逆ギレすんな!くそ親父!しーくんの何が気に入らないんだよ!浮気なんて!!」
子供が夫に怒ってくれた。
「浮気じゃねーよ!悩みがあるからって相談に乗ってただけだ」
「それが旅行になるかよ!」
子供が夫に掴みかかる。けれど体格差もあるため逆に捻じ伏せられてしまう。
「ねぇ!もうやめて!!大丈夫だから…これからバスケでしょ?遅れちゃうよ。ね?行っておいで」
そう言うと子供は舌打ちした。
「ちっ…しーくん泣かせたら許さねぇから」
悔しそうに夫を睨みながら家を出たのを見送った
「ごめんね?見るつもり無かったけど…」
「なぁ。しー」
「はい…」
「言ってたよね?」
「見るつもり無かったんだ…けど…どういうこと?」
涙を堪えながら問う。すると、夫は申し訳無さそうにゆっくりと話し始めた
「…実は…信じてもらえるかわかんないけど…前から声かけられてて…何度も断ったんだけど…一度だけ旅行に付き合ってくれればもう言わない。諦めるって言われたから…だから…ごめん」
「抱けたの?女の子」
「…」
「…良かったね。女の子とも経験できて…俺は無理だから羨ましいよ!しかもきみさんでしょ?すごく可愛いし小柄なのに出るとこ出て引っ込むとこ引っ込んで…二次元の女の子みたいだもんね!」
努めて明るく言うと夫はホッとしたように息を吐いた
「嫌な気持ちにさせてごめんね?」
「ううん…でもどうせするならこれからは僕にバレないようにしてよね」
…その後も僕はきみさんと会ったりご飯も行ったりした。あのメッセージは間違いだったんだって思えるほど普通で優しくて…
けどやっぱり間違いではなくて…だってアイコン一緒だし…
その日から続けてきみさんから連絡が来ているっぽかったけど何も言えなかった
夫が出張って言う度またきみさんと一緒なのかなぁ…なんて思ったりもしたけど…何も言えなかった…
自分だって会ってもないし連絡も取ってないとはいえ頭の中にはともくんがいる…ともくんへの想いは消えてなんかない…そんなの夫のすることと変わらないことでしょ?むしろそっちの方が悪いでしょ?
…裏切ってるんだ…夫を…子どもたちを…
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