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第32話

聖純くんはふーっと息をつくと俺を逃さないとでも言うように熱い視線で見つめてきた 「気持ちを伝えようって思ったときにあなたの結婚が決まった…そして俺の前から消えた。喪失感に気付かないようにあなたからもらった仕事を必死でこなした…考えなくていいよう仕事を詰め込んだ…その結果今の役職についた…あなたと面と向かって会えることはなかったけど何度もあなたを見に行った。子供と遊ぶあなたや旦那さんと一緒に微笑む姿…」 その綺麗すぎる笑顔がどこか狂気じみてて言葉を発せなかった 「あなたの姿を見たいがために休みのたびにあなたの住む町へ足を運んだんです…」 知らなかった事実に驚愕する… 「狂ってるでしょ?自分でもわかってるんです。おかしいって…けど…どうしても…やめられなかった…あなたから連絡が来るまでは俺は姿を表さない…ただ遠くで見つめるだけだ…そう決めて…俺は…一生一人で生きて死ぬまであなたを思い続けるって決めてたんです。なのに…まさか…このタイミングであなたから連絡があるなんて…そしてこんなにも近くに…触れられる場所にいるなんて…ごめんなさい…ごめん…けど…」 彼が思い詰めたように俺に顔を近づけた。何か言わなきゃと思ってやっと絞り出したのはなんとも情けない普通の言葉だった 「…ごめん…俺には…家族があるから…」 家族を裏切る俺が何を言ってるんだろう…そんなことを思いながら俯くともう一度聖純くんが言葉を発した 「…子どもたちと交わることも…家族だからですか?」 「な…」 「それだけじゃない…あなた旦那さん以外ともそういう関係でしょ?しかもそこに夫も交えたことだって…」 知られていた…大切に思っていた後輩に…知り合いに…そんな… 「ずっと見てたって…言ってるでしょ?貴方が誰とどうしてるのかくらい知ってます…あなたも俺と同じですよね…狂ってる…夫だけじゃなく他人…そして血の繋がった子どもたちとまで関係を持ってる…あの頃のあなたはどこへ行ったのですか?真っ直ぐで汚れてなくて…そんなあなたは?…関係する人たちの中に俺一人増えたところで何か変わりますか?」 「…俺を抱けば…君の気は晴れるの?」 「…晴れないですね…一度抱いてしまえば…多分俺はあなたを離してあげられなくなる…今以上に執着するだから…今ここで…俺を拒んでください…」 「…離して…お願い…君を…嫌いたくない…」 「…はい…すいませんでした…」 聖純くんは素直に俺を開放してくれた

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