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第37話
あの旅行から俺たちの関係は結局変わらなかった。
二人同時に抱かれることもあるし夫だけに抱かれる日もあるしともくんのところに行って二人きりで過ごすこともあるし相変わらず子どもたちにも抱かれてる。
夫もともくんも自分たち以外の相手は誰だか知らないけど明らかに他に抱かれた俺の体にいつも以上に欲情してくれる。
流石に関係する相手は増やさなかった。聖純くんから連絡は来るし食事にも行くことも増えたけどそれは実は俺が会社にパートとして戻ることになったからだ。あの日から聖純くんは俺に触れることはなくなった。それが何だかホッとしてけど少しだけ寂しくもあった
あのとき聖純くんたちと考えた案は色々なところから高く評価された。
社長直々に打診されたのだ。会社に戻ってこないか?と。
それには渋っていた夫も流石に頷いてくれた。通勤は始めは大変だったけど慣れてしまえばどうってことなかった
充実した日々を過ごして時はたち悠衣が旅立つ日が間近に迫ってきた
「親父」
「ん?」
「あのさ。俺向こう行ったらいつ戻ってこれるかわからない。しーくん寂しがっちゃうかもだけど頼んだからね。で提案なんだけど寂しがり屋のしーくんのために俺と一日二人きりで過ごさせてくんない?」
「別に構わないけど」
「ありがと。んじゃしーくん行こう!!」
そういうと悠衣は俺の手を引いて外に出た
「しーくんとデートしたかったんだよね。今日だけでいい。恋人になって。今日が終わればちゃんと元に戻るから。しーくんの子どもに戻るから…」
その言葉に頷くと悠衣が柔らかく笑ってくれた
悠衣に任せて俺は手を引かれて色々なところを一緒に巡った。本当の恋人みたいに
とはいえ周りから見るとかなり仲のいい親子にしか見えない。悠衣と俺は同じ顔だから
最後に辿り着いたのはホテルだった。
「悠衣…」
「最後に…しーくんを頂戴…親父にはさっき連絡した。だから」
悠衣に続いて部屋に入るとすぐにギュッと抱きしめられた
「しーくん。俺ね本当にしーくんのこと好きなんだ。だからね…だから…この気持ちに整理をつけようと思ったんだ…これで最後にする」
その日はゆっくりゆっくり愛してくれた…一緒に隣で眠ってゆっくり時を過ごして…
朝起きるとまだ眠ったままの悠衣の髪を撫でた
こんなに大きくなった。
悠衣の出産は一日以上を要した。生まれた瞬間は産声をあげなくて医師にすぐに引き離された。生まれたてを抱っこもしてあげられなかった。
退院も一緒にできなくて泣いたっけ…寂しくて苦しくて申し訳なくて…
それから無事退院したけど悠衣は周りの子たちより成長がすごく遅くて悩んだ日々を過ごした。
首も座らないし寝返りも出来ないしお座りも出来ないし…
話し始めたのも随分とあとだった。毎日悩んで悩んで泣き喚いたときもあった。
夫はその頃仕事が忙しいとかでなかなか家には戻れなかった。悩みも何も言えなくて…言おうとすればそんなことよりって遮られて組敷かれていた。その頃の自分が恥ずかしいと夫は今更思い返しているらしい
悠衣が生まれた頃から今までを振り返ってみると涙が止まらなかった
あんなに小さかった悠衣がこんなに大きくなった…俺たちのもとから飛び立とうとしてる…
「悠衣…愛してるよ…」
そう呟いてまだ眠る悠衣に幼い頃してたみたいに額にそっと口付けた
「ん…しーくん…何で…泣いてるの?」
「悠衣…大きくなったなぁって思ってた」
「しーくん。これまで育ててくれてありがとうね。俺の我が儘にも付き合ってくれてありがと…俺…頑張ってくる…」
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