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第53話
繫side
少しして部屋を出た。ここにきたら起こることがわかっていたし覚悟もしてきたつもりだったのに喉がカラカラに乾いてしまう。同じ屋根の下で俺の愛する人が本当に愛する人と交わっていると想像するだけで泣きそうになる。
「すいません。何か飲み物もらっても?」
「つなぐくん。うん。構わないよ。だからさっき一緒に買い物したんでしょ?ごめんね。流石に部屋に冷蔵庫ないしトイレもお風呂もないから部屋から出ないとなんない時もあるのに…配慮が足りなかったね」
「メグさん」
「複雑でしょ?」
「まぁそうですね」
「やっぱ…俺じゃだめなんだよ…ごめんね」
「いえ」
「…つなぐくんさ…もしかしてしーちゃんのこと親以上の感情持ってる?」
「そうですね。そうかもしれません。まぁどんな形になっても俺はしーくんから離れるなんてことはない。心はずっとしーくんとともにあります。悠衣…あぁ。兄なんですけど悠衣だってそうだと思います」
「悠衣くんには話してるの?」
「いいえ。両親が離婚することは伝えなければと思っていますがともさんのことを話す必要性は感じない。悠衣が知る必要はない」
「ふーん。そんなもん?家族なのに?」
「もう家を出てますし自分の夢叶えて頑張ってる悠衣に伝えたくないです。悠衣はすぐ不安定になっちゃうから」
「そっか…」
しーくんの悲鳴にも似た甘い声は貸してもらった部屋から出れば微かに聞こえてきてた。その度耳を塞ぎたくなる衝動に駆られる。
「ごめんね。お部屋にご飯持ってくよ」
自分だって苦しいのにわざと明るく振る舞い気遣ってくれる眼の前の人が他人事に思えなかった
「大丈夫。メグさんは?平気?」
「俺?うん。わかってたことだし…覚悟してたし?だから平気」
「…平気なわけ無いでしょ?泣きそうになってる」
必死に平気なふりをするメグさんの健気さに勝手に自分を重ねていた。この人は本当にともさんのことを大切に思ってたんだ…ともさんがしーくんと出会ってなければ…もしかするとこの人はこんな思いをしなかったかもしれない…そう思うと俺まで泣きそうになる。俺がもっと強ければ…俺がしーくんの子供じゃなかったなら…もっと違う出会いなら…どんなに願っても叶うことはないのに
無意識に眼の前の小さくて可愛くて強い人を抱き寄せていた
「メグさん。泣いていいよ。…ここだと音聞こえちゃうから…貸してくれた部屋に行こ」
「繫くん…」
「我慢しなくていい…大人だって同じ人間なんだから自分を騙さなくたっていいって…そう思うんだ。たまにはわがままになれば?」
「…っ…ともぉ…」
「うん…辛いね。きついね…いこ」
静かに頷いたメグさんはいくつかの飲み物と用意してくれた食事を持ってついてきてくれた
「おいしそ。メグさん料理得意なの?」
「とも…の…ために…たっ…くさんっ…べんきょ…した…の」
「そっかぁ。えらいね」
柔らかい髪を撫でるとすりすりとすり寄ってきた
「ねぇ…。…ほんっとに…未成年?」
「はい。あ。明後日誕生日ですけどね。そしたら成人です」
「ふーん…」
ピッタリと俺の隣にくっついたメグさんは戸惑いながらも膝の上に置いてた俺の手に手を重ねぎゅっと握ってくれた
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