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第59話
「しーちゃん。本当に平気?」
「大丈夫。ありがとう」
「何かあったら連絡してね。今日はこの近くで仕事してるからすぐ迎えに来る」
「心配性だなぁ。ありがとう。じゃ行ってくるね」
メグさんの車を見送り会社に足を踏み入れる直後手を引かれた
「っ!」
「先輩っ!!」
「聖純くん。おはよぉ」
「今の人…誰ですか?」
「あぁ…今旦那と喧嘩してて…息子と一緒にその人の家にお世話になってるんだよ」
「新しい…人…ですか?」
「え?そんなんじゃないよ」
そのまま使われていない倉庫に連れて行かれて壁に押し付けられた
「俺言いましたよね?自分を大切にしてって」
「うん」
「…それなのに…そんなに…なんで…俺…」
怒ったような顔をして聖純くんが俺の腕を掴んで唇が触れそうになるくらいまで顔を近づけてきた後目を固く閉じ、力を緩めた
「くそっ…すいません…取り乱して…先輩。今日は俺と行動してください。俺から離れないで」
どうしてそんな顔をするのか分からなくて戸惑いながらも言葉を紡ぐ
「元々今日は例の件の打ち合わせだから聖純くんとずっと一緒だよ?」
「あぁ!!もう!!そういうことじゃなくて…はぁ…もう…すいません。行きましょうか」
聖純くんの後に続いて倉庫を出て自分のデスクで今日の最終確認をしようとしていると
「咲坂さん!あの。これなんですけど…」
「咲坂さん。今日はランチ一緒しませんか?」
なんて…いつもより色んな人に声をかけられてしまう。何故かはわからないけれど…
「咲坂くん」
まさか社長まで俺のところにわざわざ来るなんて…
「会議が終わったあと社長室にきてくれ」
そう言いながら去っていった。
打ち合わせを終わらせて挨拶して社長室に来たのだけど…
「咲坂くんに話があってね…と…その前に…その色気をどうにかしてくれ」
「え?」
「今日の君なんか危ういんだよ。半日で良かった…間違いを起こしてしまいそうだ」
「ちょっと…言ってる意味が…」
「無自覚か…あのさぁ…咲坂くん…いや。しおり!お前な…俺は散々言ってきてだろ!!」
「何が?」
社長に向かってこの口の聞き方はないと思うが…実は社長は俺の高校の同級生なのだ。知られると俺自身を評価されなくなってしまうからと俺たちの関係は秘密だ。二人で話すときだけ元の話し方になってくれる
「何かあっただろ?」
「…別に…」
「まぁいいや。今日はお前に話があったんだ」
「はい」
「咲坂しおりくん。正社員にならないか?」
「へ?」
「いや。何も今すぐにではない。もうすぐ繫くんも家を出るだろ?その後の君の時間ができると思う。君も知っているとは思うが今順調にプロジェクトが進んでいるのは君の功績が大きいんだ。他の社員からも話しが多くの上がってきている。君はもっと評価されるべきだと。それは日々の君の働き方は勿論人柄などもあるだろう。これまで家族優先にしている君を否定するわけではない。それも君の考え方だし大切なことだっただろう。けれど仕事を辞めた君は君という皮を被った人形のように見えていたのも事実だ。子供といるときそんな風には見えなかったが…こう言っちゃなんだが…ご主人がそこにいると途端にそう見えてしまっていた」
「…幸せでしたよ」
「そうかよ…」
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