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第64話

繋side 「しーくんを虐げるだけじゃ収まらなくてね。親父…あいつは兄に関して全く関心がなかった…」 「そんなこと…」 「あったんだよ。親父は昔も今も悠衣には関心がないんだ。それだけじゃない。悠衣は昔は体が弱くて何度も死にかけては入退院を繰り返していて……そんなときもあいつはしーくんの前だけでは心配して…病院から出ると悠衣がいなくなればいいのに…なんて呟いてた……何を言ってるのか俺にはわからないと思ったんだろうな。俺はすごくショックで何も言えなかったんだ。それに比べて俺は悠衣とは違ってすごく大切にされた。容姿だけでなく色々と優秀だから自慢の息子だって…お前は俺のたった一人の息子だってずっと言われてきた。悠衣は?って聞くと悠衣はしーの息子だろ?って…しーくんの前では絶対見せないような顔して」 「そんな…あんなに…必死で…しーさんを…」 「あいつは…しーくんの努力を認めたことは一度もない。全て思い通りになる隣に置いてて自慢になる綺麗なしーくんを手放したくなかっただけだ」 絶句しているともさんの表情をしっかり見つめる 親父は生まれた俺に悠衣への汚い言葉を聞かせ続けた。周りに言っても信じてもらえないからあまり言わないけど俺はお腹の中にいたときから今の今までの記憶が全てあるのだ 親父はしーくんの目の届かないところでいつもいつも言ってた。悠衣は普通じゃないから悠衣と必要以上に関わるなって。悠衣が生まれてきたのは間違いだったんだって。悠衣が自分の子供であることがとても恥ずかしいって 悠衣は成長が平均よりずっとずっと遅かったのだ。 一つ違いの兄弟。元々悠衣は小さく生まれたから俺たち二人を連れてると双子みたいに見えてた。 悠衣が歩き出したのは俺と変わらないくらいだったし喋りだしたのは俺の方が早くてその頃になると俺が兄だとよく勘違いされてた。 でも悠衣は別に言葉を理解していないわけじゃない。滅多になかったが、たまにしーくんだけ出掛けて親父だけで俺たちを見てるとき親父はいつも俺と比較して口汚く悠衣を罵った。 悠衣は毎回その言葉を泣かずにぐっと我慢して親父の目を盗んで俺のとこに来て静かに泣いてた。 勿論しーくんの前では涙一つ流さなかったからしーくんは親父が悠衣にあまり関心がないことは知っていてもそんなに傷付けていたなんて知らないはずだし今後も教えなくていいと思ってる。 それは悠衣からの願いでもあるのだ。悠衣があれだけ親父を毛嫌いしている理由はあの始めの不倫疑惑のときからではない。 それまでも不仲だったのを悠衣が努力して見せないようにしていたのだ。しーくんが求める理想の家族というものを守りたかったんだ

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