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第69話

一緒に生活し始めて暫く。久しぶりに夫から連絡が来た。 指定された場所に行くとしとしと降り注ぐ雨の下二本の花が咲いていた。夫の傘の中には幸せそうに寄り添う恋人、そして、その姿を眩し気に見つめる虹彩さんが居た。三人は仲良さげに会話を楽しんでいるようだ。 俺の姿に一番に気付いてくれたのは虹彩さんだった。 「初めまして。しおりさん」 俺と彼が知り合いだとわからない方が都合がいいと思ったのだろう。 「こちらの店を予約してますので」 そういって先を歩き出す虹彩さんの後について歩き出す。 夫は一度も目を合わせることも声を出すこともなかった。 老舗の日本食店の離れの部屋を案内された。そんな素敵な場所が虹彩さんにはよく似合ってた。 それから少しして食事が運ばれてきたけれどとても美味しいのになかなか喉を通らなくて…その様子に気付いてくれた虹彩さんがお店の人を呼んで何か話してくれたあと食事は下げられた。 沈黙の時が続き息が詰まりそうだ。どうしていいかわからなくて困っていると夫の新しいパートナーが声を出した 「僕がっ!奥さんと話したかったんです。しおりさん!不快な思いをさせてすいません!あなたの旦那さんを好きになってしまってすいません」 凄く申し訳ないような何か言いたいことがあるような表情に気付かないふりをした。 「全て書類は揃えてあるからいつでも提出していただいて大丈夫です。あなたに腹を立てたことはありません。そんな顔しないで下さい。元は私の方が悪かったのですから夫の気持ちもわかります。私はこれまで散々夫を苦しめてきました。彼の理想のパートナーにはなれなかった。彼は私を愛してくれたのに…本当に申し訳ありませんでした」 夫はそんなことは当たり前だろうと言いたげな顔をした。 こんな顔は見慣れてた。俺は一度も彼を好きにはなれなかった…だってずっとずっとともくんが好きなんだから…引け目に感じてた。だから仕事を辞めろって言われたときも夫がきみさんと色々あったときも何も言えなかった。他の人との情事を思わせるような日だって…出張という話しが半分が偽りだったとしても… 夫の後輩くんのパートナーが言ってたんだ。出張なんて行ってないって…だから知ってた。夫が俺に嘘をついて色んな人と楽しんでいること… 彼はいつも言ってた。しおりさんはあの人には勿体ない。他にも素敵な人がいるでしょ?っていつも親身になって彼のパートナーと一緒に話しを聞いてくれてた 俺はずっと想い続けている人がいるのにそれでもいいって言ってくれた夫を責める気なんて一度も起きなかった。可愛い子どもたちを俺にプレゼントしてくれたんだもん。それ以上何を望むの? 俺は夫をアイシテナインダカラ

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