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第70話
それから何を会話したのかは殆ど覚えてない。
繋が卒業するまでは離婚届は出さないってことくらいしか
それからは悠衣には一切援助はしない。もう他人になるんだからと。
正直援助なんていらない。悠衣は大丈夫。夫のお金はあの子はほぼ手を付けてない。自分でバイトしたり繋と事業をしているから。そんなこともこの人は知らないのだろうか?それとも繋だけでやってるとでも思ってるんだろうか?そういう才は悠衣の方が持っているというのに…どれだけ見えているものしか見てこなかったのか…
確かに繋は誰よりも優秀だけどそれも悠衣のアドバイスがあってこそなのに…なんだかおかしくなってきて笑いそうになるのを必死でこらえた。
あぁ…何をこんなに萎縮していたんだろう…何をこんなに恐れていたんだろう…
「これまでありがとうございました。慰謝料請求などは弁護士を通してもらえると助かります。あなたはもう俺と会いたくないと思うから。じゃあ今日はこれで」
夫とパートナーに声をかけ深く頭を下げ立ち去ろうと背を向ける
「しー」
まさかの声をかけられる。振り返るとなんとも面白い顔をしてた。
「じゃあ…お幸せに…」
何か言いたげな夫に背を向け今度こそ歩き出した。
その後ろを虹彩さんがついてきた
「虹彩さん。すいませんでした…大切なパートナーを…奪ってしまって…」
「いや…それはこの間あったときにも話したでしょ?…ふふっ…あははっ!!しおり君すごいね。あの空気で」
「…何かおかしいですか?」
「いや。君の旦那さんはきっと君が縋りついて泣くことを期待していたんだろうね。それを偽りの優しさで慰めてあの子の気をもっと自分に夢中にさせようとした。あぁ…面白かった」
「辛くはないですか?」
「だから、俺たちは愛し合っていたわけじゃない。あの子が幸せであればそれでいいんだ。もしも万が一君の旦那さんが泣かせたりしたら…その時は相談に乗ろうとは思っているけどね。それでだ。君は私のところに来る気はないかい?」
「ごめんなさい」
「あはっ!即答かい?まぁそれが本来の君かもしれないけどね。君の交際相手面白いよね」
「ご存知なのですか?」
「あぁ。知ってるよ。彼といることは幸せかい?」
「はい!」
「そっか。それなら何も言えないね。彼に飽きたらいつでもいいからね。それとこれね。帰ったら彼と息子さんとお友達と一緒に食べたらいい」
綺麗に包装された包を渡された。なんでそんなふうに言ってくれたのかな?今誰のところにいるのか虹彩さんは知らないはずなのになって不思議だったけどそのご厚意を受け取ることにした。
「ここの料理はどれも美味いんだ。気のおけない相手と食べたほうがいいだろ?」
「ありがとうございます。今日はお世話になりました」
虹彩さんはその後のことなどの連絡も必要なこともあるかもしれないからと連絡先を交換して爽やかに笑うと俺を送り出し店へ戻っていった
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