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第72話

虹彩さんと分かれて近くで待っててくれたともくんのところへ足早に向かう。 あれからともくんは仕事に復帰した。まだ本格復帰とは行かないけど。 少しずつ元気を取り戻して普通の食事も取れるようになった。表情だって柔らかくなった。 職場に戻ると暖かく迎えてくれたって嬉しそうに話してくれた 「おかえり。しーさん。なんか…スッキリした顔してるね」 「そうだねぇ。で、今後の事なんだけど…」  「ん…」 さっきの会話をすべて聞き終えたともくんは安堵の笑みを浮かべた 「平気?」 「大丈夫。だってともくんが支えてくれるでしょ?」 「それは当然だねぇ」 「ねぇ、ともくん。家は…どうするの?」 「メグがどうしてもまだみんなで住みたいって言ってるからそれに甘えようかなって思ってる」 そうなのだ。ともくんが動けるようになったし、まだ俺は婚姻中の身。ずっと俺たちといることはメグさんの負担になるって思ったから家を探し始めたんだけどそれを知ったメグさんが拒否したのだ 「勝手に出ていったらやだからね!!」 って涙ながらに。その姿に物件を探すのをやめてズルズルと今も一緒に住んでいる。家事は一緒にさせてくれるようになったけど。 「しーちゃんやともや繋くんと一緒にいるのすっごく楽しいから行かないでよぉ。せめて繋くんが卒業するではここにいてよぉ」 って本当に子供みたいに言うメグさんをみていたらなんだかこっちも楽しくなっちゃって甘えっぱなしだ 「俺ね今みんなと一緒にいられて凄く幸せなんだぁ。俺には家族というものがもういないんだ。両親は俺が産まれてすぐ立て続けに亡くなっていてその後祖父母に引き取られたのだけどその人達も幼い頃に亡くなったからその後は施設育ちだった。俺ね、家族というものに憧れててさ。 自分の血を継いだ子供が持てたらって思って一度は女性と結婚を前提に交際もしてたんだけど…検査したら俺に原因があってね。子供は無理だって言われたの。彼女はそれでもいいよって言ってくれたんだけど…でもさ。俺のせいで彼女を後悔させたくなくってさ。その後結局その女性とは上手く行かなくって…それじゃあ自分でって思って妊娠薬を服用していたこともあるんだけど体質的に合わなかったみたいで子宮できなかったし副作用酷くって…だから…こうしてみんなと過ごせることが、とても嬉しいの」 これはメグさんが以前話してくれたこと。メグさんは沢山沢山迷って苦しんでそれでも何か掴みたくて…ずっとずっと走り続けてきたんだ とても世話好きで本当は優しい人。その彼を追い詰めたのは俺にも責任がある気がして… だけどそう思ってるのを察したのかメグさんはしーちゃんのせいじゃないからっ!!って強く話してくれた。 その時のことを思い出していると俺は何て贅沢なことをしてるんだろうって思ってみたりもしてて 「しーさん。平気?ぼーっとしてるけど…」   「ん。メグさんのこと考えてた。メグさん俺の状況ちょっとしかわかんないよねぇ?…家族を持ちたいメグさんが俺のしてきたことの話を聞いたらどう思うかなぁって…軽蔑されちゃうよね…。けど…」 「話すんでしょ?」 「うん。」 「一人で…平気?俺さ…一度送ったら一旦会社に行かないとなんなくなっちゃって…ごめんね。メグは今日休みだから家にいるんだけど。本当にごめん!!」 「いいよ。無理はしないでね!大丈夫だよ。何かあったらまた連絡するね」 心配そうにするともくんを見送って深呼吸して玄関のドアを開けた  

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