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第85話
虹彩side
清華は昔からの腐れ縁ってやつで俺が唯一気を許せる相手だ。清華の前の担当や清華のお陰もあってしおりくんは何も失わなくて済んだ。勿論一番は繋くんのあれがあってこそだけど
遠くなっていく背中を見つめていると清華が俺の腕を引いた
「虹彩」
「清華。ありがとうな」
「滅多に頼み事なんてしないお前の頼みだ。どんなことでも叶えてやるさ」
「…」
「まだ…しおりくんのこと…好き?」
「…あぁ。そう簡単に吹っ切れるものでもねぇだろ」
「出会ったときから他の誰かに託すんじゃなくて引き止めておけばよかったんだ。ばかだなぁ」
「うるせぇよ。誰のせいだと思ってんだ」
「俺のせいだな。虹彩これから会社行くんだろ?」
「あぁ」
「何時まで?」
「いつも通りだよ」
「なら家で待ってるわ。慰めてやる」
「…サンキュ…」
踵を返し歩き出そうとする俺を清華が引き止め額に口付ける
「てめ…こんなとこで何しやがる」
「へへっ!たまにはいいかと」
「ふざけんな。じゃあな」
清華の気の抜けた笑顔に毒気を抜かれため息をつく
立ち去る俺の後ろ姿を清華が切なげに愛おし気に見つめてることなんて知らないままいつもの日常に戻るのだ
「おかえり。虹彩」
「ただいま」
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