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第7話

 なんとか持ち直した6年生3人が一生に襲いかかる。  そこから先は、6年生3人対旭葵と一生の戦いになった。 「おまえら、やべぇ」  6年生3人が公園から逃げて行く。それを見て、ジャングルジムの周りにいた子らも3人の後を追う。  公園内に旭葵と一生だけが残った。 「大丈夫か」  一生は旭葵に向き合った。 「血が出てる」  指先で旭葵の鼻の下を拭う。そう言う一生も唇の端が切れて血が滲んでいる。旭葵を庇って6年生の拳が当たったのだ。けれど一生に当たった一発はそれだけだった。  旭葵は……。旭葵は最初に鼻血を出した一発だけで、一生が加わってからは無傷だった。もし一生がいなかったらそれだけでは済まされなかっただろう。 「あいつらが悪いんだ、俺を女と間違えるから」   いつも両親や学校の先生にする喧嘩の言い訳。大人たちは決まって「だからと言って暴力はダメ」と口をそろえて言う。子どもでも、特に女子は大人と同じことを言う。  旭葵は悪くないのに旭葵も悪いと言う。旭葵が何か言おうとすると、「まずはこっちの話を聞いて」と、結局旭葵に最後まで言いたいことを言わせてくれない。そして結局なんの解決もしてくれない。だから同じことが繰り返される。  一生は旭葵の言い訳に、ただ、 「うん……」  とだけ、うなずいた。 「俺を姫にしてやるとかなんとか言いやがるから」 「うん……」 「って、お前も同じこと言っただろうが」 「うん……」  チッと、旭葵は舌打ちをした。  それでも旭葵は分かっていた。あの6年生3人と一生が違うことを。あの3人だけじゃない、一生は今までの誰とも違った。  旭葵を女の子と間違う奴らは旭葵が男の子だと分かると、手の平を返したように態度を変えた。大袈裟にがっかりしたり、旭葵をからかったり、ひどい時は怒り出す奴もいた。  旭葵は何もしていないのに、勝手に勘違いして勝手に裏切られたなんて言う。まるで女じゃない旭葵がダメなように言う。旭葵はただ旭葵なだけなのに、本当の自分が否定されたように感じた。だから嫌なのだ、女の子と間違えられるのは。  一生だけだった。旭葵が男の子だと分かっても、態度が変わらなかったのは。さっきの6年生だって旭葵が男の子だと分かると容赦せずに殴ってきた。  あの日の浜辺で、一生は一度も旭葵に手を出さなかった。

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