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第40話

 新学期が始まり程なくして、文化祭のシーズンがやってきた。 「それじゃ、仮装コンテストの白馬の王子様部門は三浦君エントリーで決定で、あとは女装部門に誰を選出するかですけど」  文化祭執行委委員の言葉に生徒の何人かが旭葵の方をチラチラと見る。 「俺は絶対やんねぇからな。南米音楽研究部の演奏もあって忙しいんだ」  旭葵はこれ見よがしにコンドルは飛んで行くの楽譜を広げる。とは言っても、3日間ある文化祭のうち演奏があるのは最初の2日間だけで、3日目の最終日に行われる仮装コンテストには被っていないのだが。  すると誰かが旭葵の頭を丸めたノートでスパーンと叩いた。 「何言ってんのよ、この前の三浦君の応援すっぽかしたくせに、あんたに拒否権はないの、いいわね! みんな女装部門は如月君でいいよね?」  あの日、みんなで応援に行こうと言い出した女子だった。さすがの旭葵も隼人の件を持ち出されると反論できない。去年はどうにか逃げ切ったが、今年は腹をくくるしかなさそうだ。  さんせーい! とクラスのあちこちから声が上がる。 「これで女装部門はもらったな」  クラスの男子の1人が独り言にしては大きな声で呟いた。 「俺マックシェイクにしようかな」 「私は飯田屋のシュークリーム」  担任教師が仮装コンテストで優勝したらクラス全員に好きなものを奢ってくれると約束したので、みんな大はしゃぎだ。 「おいおい、あんまり高いのは勘弁してくれよ」  担任までもう優勝したつもりでいる。そこから女子たちを中心に、旭葵にどんな女装をさせるかで盛り上がり始めた。  マリリンモンロー、婦人警官、キューティーハニー、などなど。 「畜生。全員殺す、文化祭終わったらこいつら全員殺す」  悪態をつく旭葵を、隣の席の湊がまあ、まあ、まあとなだめる。 「如月君ってフェアリー系だから王道でいくとドレスだと思うんですけど、それだとまんまで面白くないかな、と。で、ここは意表をついて、私たち日本人なんですから、ザ・日本の姫でいきませんか? それも平安時代の十二単はありきたりなんで、戦国武将の姫をテーマにするなんてどうですか?」  その発言に、おお〜と皆、賛同の感嘆を漏らした。  ホームルームが終わってもクラスは仮装コンテストの話でもちきりだ。 「如月君と三浦君で、うちのクラスダブル優勝できるんじゃない?」 「白馬の王子様部門で3組の桐島君が出なければね。ねぇ、如月君、桐島君がコンテストに出るかどうか知ってる?」 「そんなの、知んねぇよ」 「ねぇ、聞いてみてよ、仲いいでしょ」 「自分で聞けよそんなの。それに一生は白馬の王子って感じじゃないだろ」  また頭をスパーンと叩かれる。 「あんたホントに乙女なのは外見だけだね。桐島君のカッコ良さ全然分かってない」 「分かってないのはお前らだろ」  一生は白馬の王子なんて柔っちい感じじゃなく、もっと男らしいんだよ、たとえば勇ましい  戦国武将みたいなさ。  旭葵はそう心の中で呟いた。

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