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第43話
文化祭が近づくにつれ一生とは登下校が別々になっていった。文化祭実行委員長の補佐役をやっている一生は、朝は旭葵より早く、帰りは部活の後に居残って文化祭の準備をしていた。
休みの日まで他の実行委員のメンバーと集まってミーティングをしたり必要な物の買い出しに行ったりしているという。
「なんかそれって、危なくね」
5個目のパンの袋を開けながら大輝が言った。
昼休み、寄せ合わせた机の周りにいるのは旭葵に大輝と湊、それに隼人の4人だ。一生は文化祭実行委員になってから昼はずっと別だった。
「休みの日まで打ち合わせっておかしくね? それ委員の中に一生狙いの女子が絶対いるだろ」
「まぁ、確かに……」
湊はポリッと指先で頬をかいた。湊曰く、以前一生に告白した激カワ1年の女子が実行委員の中にいるらしい。
「あ、それは完全にクロだね。つか、それで休みの日も会ってるってことは、もう2人はデキてるか、奴が落ちかかってるかのどっちかだね」
隼人はバキュンと指鉄砲で打つ真似をした。
「それはないと思うけどな……」
湊は隼人の球を交わす振りをする。
「文化祭の実行委員を一緒にやったのがきっかけで恋が芽生え……なんて、なんか青春だよなぁ。今まで不落の城だった一生が落とされるのを見たい気もしないでもないけど。激カワちゃんが一生にラストダンスをねだるのは間違いないな。同じ実行委員というだけで他の女子より何歩もリードしてるからな」
大輝の言う通り、はたから見て実行委員たちには妙な結束力のようなものがあった。
文化祭の成功という目標とそれに伴う苦労を共有することで独特の仲間意識が生まれ、普通の生徒は立ち入れないような雰囲気を彼らは醸し出していた。
そんな中に年頃の男女がいて、イベントの締めくくりがムードたっぷり、キャンプファイアーの前での告白タイムときたら、好きな人がいなくても、とりあえず誰でもいいから告白したくなってしまうんじゃないだろうか。またはさほど好きじゃなくても、ムードにのまれて好きだと錯覚してしまうとか。
一生の馬鹿、女子達をまくどころか、これじゃ去年よりタチが悪いじゃないか。
『そうだよな……、作った方がいいのかもな』
よもぎを撫でながら神妙な顔をしていた一生を思い出す。
まさか……、ラストダンス、O Kしたりしないよな。
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