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第45話
焼きそば、おでん、チョコバナナ。
大輝はガッツリ系、湊は甘い物、あ、隼人にも何か買っていってやろうかな、などと旭葵は校内を物色して回る。
カラフルなタピオカドリンク屋が目に止まり、湊が好きそうだと旭葵は列に並ぶ。ココナッツミルクに、抹茶クリーム、ストロベリーソーダ、どれにしようかと迷っていると、旭葵の後ろに女の子が2人並んだ。
「ねぇ、鈴って今日桐島先輩にラストダンス一緒に踊ってくれるよう頼むんでしょ」
一生の名前が出て、旭葵の耳が自然とダンボになる。
「だってそのために鈴は文化祭の実行委員になったんだもん。なんか休みの日も会ってるらしい」
「え? それってもう確実じゃない? 桐島先輩と付き合えるなんて、超羨ましいよ〜」
「でもさぁ、あ、あれ? 如月先輩?」
2人の女の子のうちの1人は湊の妹だった。
「や、やぁ、お兄さん元気? って、俺、湊のためにここに並んでるんだった」
明らかに挙動がおかしくなってしまう。
「兄がいつもお世話になってます。あの、私ですね、如月先輩の昨日と一昨日の」
湊の妹が何か言いかけたが、旭葵の順番が来て話はそのままになってしまう。
タピオカを買い終わって2人を見ると、2人はちょうど注文しているところだったので、旭葵はそのままその場を離れた。
「ねぇねぇ、さっきの人誰? めっちゃ美形で心臓が止まるかと思ったんだけど」
湊の妹の肘を友人が突く。
「お兄ちゃんの友達。でもって桐島先輩の親友……なんだけどさぁ。桐島先輩って」
その先の言葉を濁す。
「桐島先輩が何?」
「ううん、なんでもない。それより早めに行ってステージ前のいい席取ろうよ」
「だね、仮装コンテストめっちゃ楽しみ」
2人はタピオカドリンクを啜りながら弾むように歩き出した。
さっきから鉛の靴を履いているかのように足が重い。気づくといつの間にか立ち止まってしまっている。旭葵はふうっとため息をついた。
やっぱり予想した通りだった。それまでは、心のどこかで激カワちゃんが文化祭実行委員になったのはただの偶然で、彼女はもうすっかり一生のことなんてどうでもよくなっているんじゃないかと思ったりもしたが、そんなことはなかった。
一生は前に言っていた。フラれても、それでもまだ好きで仕方ないのが本当の好きだって。
激カワちゃんは本気で一生のことが好きなんだ。そしてその本気はきっと一生の心に届く本気だ。
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