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第49話
甘ったるい香りのする粉をはたかれ、顔のいろんなところをいじられる。目を閉じているので何をどうされているのか分からないが、ちょっと痛かったりくすぐったかったりする。女の子って大変だな、と思ったりしているうちに、なんだかウトウトとしてきた。
「さ、メイクはこれで完了と。如月君、目を開けていいよ」
旭葵が目を開けると、
「うぉっ」
と、女子達が変な声を出した。
「なんだよ」
「ちょっとちょっと、早く衣装着せて髪もやっちゃおうよ」
長襦袢を着ると、きれいな空色に大きな白百合の柄が入った着物に袖を通す。着物の裾は引づるほど長く、その上に薄紫色の羽織を重ねる。
着物と羽織の両方に銀箔が散りばめられていて、全体的に霞がかかったような幻想的な雰囲気を醸し出している。髪をまとめると腰までもあるサラサラと長い黒髪のかつらを被った。
「ねえ、コレコレ」
最後に着物の柄と同じ大きな白百合を旭葵の耳元に挿した。
ちょうどその時扉が開いて、隼人と大輝、そして湊が入ってきた。
「おっ……」
3人は入口で固まった。3人だけではない、そこにいる全ての人間が言葉を失っていた。
最初に魔法から解けたのは大輝だった。
「す、すげぇ、こりゃ姫は姫でも普通の姫じゃねえ」
「芸術的というか宇宙的というか、なんかこう、この世の者とは思えない美しさだな」
湊もあっけにとられている。
「月の姫……、かぐや姫だ」
夢見るようにぼおっとした隼人の口から言葉がこぼれた。
旭葵の耳元に添えられた白百合が記憶の中の白いバンダナと重なる。
隼人の初恋の少女がそこにいた。
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