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第61話
「早く元気になれよ、旭葵」
「なんかごめんね」
自分たちのせいで旭葵の熱がぶり返してしまったと申し訳なさそうにしながら、大輝と湊は帰っていった。
熱で朦朧としながら、明日も明後日も熱が下がらなければいいのにと思った。
だって、次に一生と会った時いったいどんな顔をしたらいいんだよ。
これが普通の男女だったら付き合うことになるのだろうけど、自分たちは男同士。ちょっと待て、男女だったら付き合うことになるって、それって気持ち的には一生と付き合ってもいいってことか?
というか、一生は俺ととどうなりたいんだ? そもそも付き合うってなんだ?
一緒に登下校したり昼飯食べたり、休みの日も会ってお互いの家を行き来したり、それってすでにもうやってることだ。
ぶっちゃけ、一生と旭葵はそこら辺にいるカップルよりお互いのことを理解し合っているし、一緒にいる時間も長い。それはこれからも変わらないと旭葵は自負している。
雨上がり、空に大きな虹を見つけた時、それを真っ先に教えたいと思うのは一生だし、パピコの半分を誰かにあげるとしたら、迷わず一生だ。
それとも一生は、他にもっと何か欲しいものがあるとでも言うのか?
次の朝、目が覚めると旭葵を占領していた高熱はすっかり威力を失い、平熱に戻っていた。
こんなに風邪が治ったことに失望した朝が未だかつてあっただろうか。お婆さんに仮病が通用するはずもなく、のろのろと学校に行く準備をしていると、いつも通りの時間に家を蹴り出された。
文化祭が終わったのだから一生も以前の生活に戻っているはずだ。このまま普通に歩いて行ってしまうと、バス停で一生と会うことになる。
もうこの際、遅刻してもいい。
旭葵はバスに間に合わないよう、わざとゆっくり歩いた。バス停に一生の姿がないのを見るとほっとした。
次は昼休みか……。
朝の穏やかな海を眺めながら、船酔いしそうな荒波を胸に抱えた旭葵はため息をついた。
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