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第77話
次の日、朝のホームルームで担任教師が旭葵の欠席をみんなに知らせた。1週間程休むと伝えられただけで、理由は言わなかった。
大輝、湊、隼人の3人が速攻それぞれ旭葵にメッセージを送ったところ、湊にまとめて旭葵から返信があった。
どうもブラジルにいる旭葵の両親が突然一時帰国したらしく、家でゆっくりするのかと思いきや、旭葵やお婆さんも連れて九州で温泉巡りをすることになったらしい。
「家族旅行で学校を1週間休ませるって、なんかだいぶゆるい両親だな。お婆さん体調が悪かったんじゃないのかよ。つか旭葵の両親ってブラジルにいたんだな」
隼人は驚きながらもちょっと温泉が羨ましそうだ。
「旭葵のお父さんは写真家であっちで仕事してるんだよ。写真家って言ってみればアーティストみたいなもんだからさ、いろいろと発想が自由なんだよ」
湊がとりあえず如月家を擁護する。
「旭葵のお母さんって旭葵と激似でさ、お父さんの写真のモデルをしたのがきっかけで2人は知り合ったんだって」
大輝の補足に隼人は想像を膨らませる。
「旭葵の人妻バージョンかぁ、なんかやべぇ」
「変な想像すんなよ」
湊が隼人の頭を軽くはたく。
「けどさ、1週間もあれば一生の記憶どうにかなるんじゃね? なんか俺たち昨日は結構深刻だったけど、意外となんにも心配することなかったりして。一生はともかく、旭葵は九州で温泉だよ、俺たちだけ悩むってなんかアホらしくないか」
大輝の意見に湊も隼人も「確かに」と同意する。
「僕なんて昨日あんまり眠れなくてさ。でも、なんか良かったかも」
湊はそう言うと、旭葵に『温泉楽しんできてね』とメッセージを送った。
この時まで3人は思っていたのだ。すぐに全て元通りになると。以前のような日常が戻ってくるのものだと。
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