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第3話密会①
社長との約束は、カメラの前でメンバーと仲良くすることだった。
Neoのメンバーは、僕と未玲を含めて他に3人。
最年長で、リーダーの翔琉(カケル)くん。
ダンスが得意で料理上手な晴(ハル)くん。
そして、僕と同い年で親友の智瑛(チアキ)だ。
智瑛には、僕の演技を早々に見破られて
「お前、何企んでるの?」と詰め寄られたから
正直に社長との約束を話したら
本気で呆れられた。
ターゲットを未玲にすると伝えた時も「お前、大変なことになるぞ!?」となぜか本気で止められたけど。
自分で始めたことは、最後まで上手くやる。
智瑛は過保護で心配性だから、大袈裟に言っているだけだと…思っていた。
✳︎✳︎
「……蒼くん、こっち。」
「え?こっち……って!?」
「大丈夫!ここ、VIPしか入れない
会員制のホテルだから。身バレしないよ?」
「で、でもぉ……」
玲に、言われるがままに車を走らせていた運転手も少しだけ心配そうにこちらを見ている。
フードを深く被って、顔を隠しながら
早く降りてと僕の腕を引く。
目の前の高級ホテル。確かに人通りも少なくて関係者しか入れない裏口の通路がある。
2人きりになりたいと言われたけど、メンバーとホテル?
カメラも回ってないのに、玲とここまでくる必要があるのだろうか?
収録で疲れてるし、出来れば早く宿舎に帰って智瑛とゲームがしたい。
「田中さん!明日の朝迎えに来てね!」
「はい、わかりました。」
「あ、ちょっ、田中さん!?」
車内でモジモジしていた僕の手を、無理やり引いて下車させると
運転手の田中さんまで、帰してしまった。
「ちょっと、玲……!?
僕まだ行くって言ってない……」
「こんな場所で突っ立ってると目立ちますよ?
入りましょう!」
「な、何もしないよね?」
「何って……なんですか?」
「い、いや!何でもない!」
「?変なアオくん!」
そ、そうだよな!
……素直で可愛い、玲のことだ。
場所が会員制の怪しいホテルだからって、警戒することはない。
ただ2人で話したいだけだろう。
玲はデビュー当時から歳の近い僕に懐いてたから。
背の高い玲の背中を見つめながら、手を引かれるままにホテルに入る。
VIP限定とあって、中は高級感漂う内装。
スーツを着たコンシェルジュが深く一礼すると何も言わず……玲にカードキーを渡していた。
慣れたようにカードキーをエレベーターに翳すと、一度も止まる事なく目的の部屋階まで到着する。
ど、どうしよう?何だか。
「な、慣れてるね?玲?
彼女とよく来るの?」
目の前の玲が
「彼女なんか、いませんよ。」
「勿体無いね、こんなイケメンなのに。」
「蒼くん、僕に彼女がいたら
……泣くでしょ?」
「へっ?」
「メンバーと僕が少し仲良くしただけで
哀しい顔するのに。」
そんなこと、しませんよ?と
優しく笑った。
そ、それは社長と決めたミッションの一つです。
……なんて口が裂けても言えないほど
玲が僕を見つめる眼差しは愛おしげで甘い。
何だか、いつもの玲とは違う人みたいだ。
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