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キングが目を細めて笑った。とても朗らかな表情だ。
(うっ……!)
リスオの心臓がドキンと跳ねた。
(ど、どうしたんだよ、おれ……)
顔を火照らせながら、リスオは胸元をぎゅっと掴む。胸が苦しい。過去に失恋した時の苦しさとはまた違う。もっとこう、心臓がぎゅーっと縮まるような、甘い疼きだった。
リスオは隣に立つキングを見上げた。
堂々とした姿。しかし実は孤独で、愛に飢えている。そんな彼の本当の姿を知るのは、自分だけなのだ。
(こいつはギャップ萌えの塊か?)
リスオはじっと彼に視線を注いだ。鼻の高い、良い横顔をしている。その瞳は、カレー作りを始める前と打って変わって、吹っ切れたような色を浮かべていた。
「リスオ。やるぞ」
「うん……って、火が強い!」
コンロから、ゴウゴウと青い炎が吹き出している。
「見ろ、これが時短だ」
「違うから! うわ、焦げるーっ!」
それから二人はカレーの続きを作り始めた。
しかし時折ぶつかるお互いの肩や、交わす視線や、笑い声が、先ほどまでの二人と何かが違うことを表していた。
(キングが喜ぶなら、これからも一緒にご飯を作って食べよう。おれといる間だけでも、過去の寂しさを忘れられるように……)
キングの背中を見ながら、リスオは思った。ゆらゆら揺れる、彼の獅子の尻尾。ご機嫌なようだ。ぐつぐつ煮える、鍋の音。食欲をそそる、スパイシーな匂い。炊き立ての真っ白なご飯に、紅い福神漬けも用意した。辛いのは嫌い、と文句を垂れるキングの為の、甘口のカレー。そのどれもが、二人を自然に笑顔にさせる。
美味しいカレーが出来上がった。
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