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19 第三・五章 獅子倉視点(R18)
「……っ、は……んん、ふぅ……っ」
獅子倉王{ししくら・つかさ}の頭上で、意中の人である栗田{くりた}リスオの甘いボーイソプラノが響く。
「キ、ング……だめっ……、そんなに強くしたら……すぐ、出ちゃう……っ」
「出せよ」
獅子倉は、赤い舌でリスオのものをちゅっと吸って答えた。立ったまま、屹立を口で愛撫されている彼は、顔を紅潮させ、大きな瞳に涙を溜めている。年上とは思えない蕩けた顔に、獅子倉は興奮する。
(ああ、可愛い)
十月下旬のとある早朝。リスオの部屋の狭いキッチンで、二人はいやらしい行為にふけっていた。
獅子倉は、シンクに寄りかからせたリスオの股間に顔を埋め、彼の分身を熱心に舐める。パジャマ姿のリスオが感じている姿は最高で、時間を忘れて愛撫に没頭したいが、そうもいかない。今日は本社に行く予定だ。会議がある。
リスオは、始発に乗る獅子倉を見送るために、眠い目を擦って起きてきた。だが、リスオと離れがたく、最近許してもらえるようになったキスをしているうちに、獅子倉が我慢できなくなり、こうして啼かせている。
(あー……ヤりたい。でも今ヤったら新幹線に間に合わなくなる)
股間がムラムラ、いやギラギラする。とうに張り詰めた自身の爆発を制するので精一杯だ。
小柄な彼は、びくびくと腰を跳ねさせながら、「んっ」と淫靡な声を漏らす。リス耳が震えていた。柔らかな和毛からは、バニラの香りがした。なめらかな亀頭から次々溢れる白蜜は、苦くて甘く、獅子倉を夢中にさせる。
時折性感帯である、しっぽの付け根をこすると、「あんっ」と堪えきれない快感の声が漏れて、それを聞く度に、獅子倉は理性がぶち切れそうになる。
(今すぐその白い尻をひんむいて、奥までつっこんで、アンアン泣かせて、『こんなの初めて……キング、大好き』って言わせたい……)
頭の中では、もう何度リスオと睦み合ったか知れない。けれど、自分の発情をぶつけるのには、リスオはか弱すぎる。なんたって、獅子の半獣人は、一度の交尾で百回は射精しないといけないのだ。
その負担を考えると、獅子倉は愛の営みを最後まですることを躊躇する。初めて絡みあった時、リスオは一度達しただけで、消耗して、眠ってしまった。残された獅子倉は、その後、ひとりで一万回スクワットをし、性欲を鎮めたのだ。
一回だけでいいと言ったのは自分だから、寂しくはなかった。しかし今後、残りの九十九回、リスオを付き合わせるのだと思うと、彼の身体が持つかどうか、心配だ。
(おれはリスオが好きだ。だからいずれ抱く)
その気持ちは揺るぎない。ちなみに、獅子倉はもうリスオと付き合っている気でいた。
「ん……っ、ふぁ……そこ、触っちゃ、いや……っ。恥ずかしいからぁ……っ」
亀頭と幹の繋ぎ目を指で作った輪で擦ると、リスオはいやいやと首を横に振った。しかし、獅子倉は知っている。秘部を触られている時の彼の制止は、『もっとして』という意味を持つことを。
(素直に認めればいいものを……。いじめて下さい、ってことなのだろうな)
強情なところも堪らない。そう勝手に解釈して、獅子倉は持ち前のSっ気を発動させた。
「いやじゃないだろ……。気持ちいいのだろう? 恥ずかしがってる姿も可愛いな」
わざと自慢のテノールを響かせる。リスオは獅子倉の甘い低音が好みのようで、いつも可愛いくらい反応するのだ。
「ちが……っ! ば、か……ん、ンン……っ。見ちゃ、だめぇっ……」
今も、リスオはぶるっと白い太股を反応させた。そこに唇を落とすと、さらにビクンと腰が跳ねる。ぷるんと桃色の肉茎が跳ねて、先走りの蜜が獅子倉の頬に飛んだ。
「おっと」
「あっ、ごめっ……。って、舐めないで……っ」
「ん。美味い」
獅子倉は親指の腹でそれを拭って、口に入れた。リスオは顔を真っ赤にして悶えている。
「ばか、汚いって……!」
「ははは、フェラしてるやつに言うことか? お前の体液、すごく甘いぞ」
「……っ! ばか、ばか、キングのばか……っ」
「可愛い、リスオ」
「いや……ぁ、あ、っ……」
口淫を再開する。今度は後ろの狭間を割って、指を這わせてみた。
「あっ」
リスオが目をカッと開いて、背を逸らす。ぴたぴたと、皮膚で皺の寄った蕾{つぼみ}に触れると、明らかに彼の身体が強ばった。
「大丈夫。触るだけだ……」
キングは優しく囁いて、彼の太股を撫でる。そうすると、ホッとリスオが息を吐いた。
(まだ怖いんだな……)
本当は、リスオの秘部に、今すぐ己の分身を突っ込みたい。行き止まりまで犯して、何度も抜き差しして、気絶するまで啼かせて、精をぶちまけたい。そう、百回は。
(って俺、がっつきすぎだろう……)
獅子倉は、時折自分の余裕の無さが情けなくなる。もっと大人の男だったら、リスオの心と体が整うまで、いくらでも待つのだろう。強引に初めてを奪ったりはしないはずだ。
(俺だって、待てる。リスオがいいって言うまで)
獅子倉はそう考えながら、口での愛撫に意識を戻す。リスオの脚がガクガクしている。限界が近いのだろう。
「あ……っ、だめ、キング……。もう、立っていられな、い……! イく……っ」
崩れそうになるリスオを、獅子倉は支えた。
「……イけよ。お前の美味いの、飲みたい」
最後にじゅるじゅるっといやらしい音を立てて、吸い上げると、リスオは堪えきれずに、とうとう絶頂を迎えた。
「あっ、あっ……ああぁぁ――……っ!」
切なげに腰を震わせて、リスオが果てた。頬が紅潮し、形の良い眉がハの字になり、ふっくらとした唇が丸く開かれる。その奥で赤い舌がひらめいた。長い睫毛に縁取られた、ガーネットのように輝く瞳から、透明な雫がいくつも滴る。実に扇情的な光景だった。
(エロい……)
獅子倉は、焼け切れそうな理性をつなぎ止めるのに必死だ。ピュクッと溢れた精を、ゴクリと喉を鳴らして飲み干す。青い味が広がった。
「大丈夫か」
「ん……」
「仕事行くまでまだ時間あるだろ? もう少し寝てろよ」
「だって……キング、もう行っちゃうから……」
潤んだ瞳で見詰められると、ずきゅんと胸が跳ねた。
(可愛い! 俺は愛されているっ)
「ばか。そんなかわいいこと言うと、もう一回ヤるぞ」
「それはむりぃ……」
獅子倉は力なく崩れるリスオを抱き留めると、その柔らかい唇にキスをする。パジャマの乱れを直し、下に敷いた布団に運ぶ。以前リスオはロフトの上で眠っていたが、獅子倉と身体を合わせるようになってから、床で眠るようになった。つまり、毎晩抱き合っている。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃ……い……」
すうすうと、リスオは眠ってしまった。獅子倉は、そっと愛しい相手の額にキスをしてから、彼を起こさないように部屋を出る。急いで駅に向かい、新幹線のグリーン車に乗り込み、T京へ向かう。そうしているうちに己の性欲は静まった。
(なんの思い入れもない街だったのに、あいつが住んでいると思うと、離れるのが寂しくなる)
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