8 / 25

第8話

「あなたっ………澪をどこに連れて行くつもり…」 「ハァハァ…澪くんってお名前なんですね。 名前まで可愛いなぁ。 澪くんは今日からぼくが預かりますので。」 「何を言っているの!澪は私達の子よ。澪を返して!」 お母さんは僕のことを取り返そうと、 必死でお兄さんの腕を掴んでいた。 「僕だったらあなた以上に澪くんの事を大事にできます。だから僕に……」 お兄さんが喋り終わらないうちに お母さんは隙をついて僕の事を助けてくれた。 「澪行くよ、走って!」 わけもわからず泣きながら走った。 お母さんに引っ張られながら無我夢中で走った。 後ろを振り返るとお兄さんが笑みを浮かべていた。 「僕の澪……また会おうね。」 その言葉は僕には届いていなかった。

ともだちにシェアしよう!