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第10話 処女喪失★
「んっ、ちょ、っと……待てよ……っ」
「何でですか。煽ったの、祐輔さんですよ?」
祐輔は洗濯物を退かしたソファーで蓮香に押し倒され、貪るようなキスをされた。
確かに、いくら気になったからと言って、顔のホクロを舐めるなんて普通ならしない。でもさっきはちょっとした好奇心で……それ以外の何でもない、……はずだ。
しかし、弱っていた蓮香には刺激が強すぎたようだ。蓮香からキスを迫られ胸を撫でられたらそのまま流されてしまい、首筋に舌を這わされ、否が応でも身体が熱くなってしまった。
「祐輔さん、イクとこ見たい」
蓮香の声がもう上擦っている。彼に聞きたいこともあったのに、と思うけれど、今の彼を拒否したら多分、蓮香はもう自分に近寄りもしなくなるだろう。
真剣に向き合うと言った途端拒否しては、祐輔の誠実さはゼロだ。けれど、蓮香を傷付けずに拒否する方法が分からない。──身体で慰める方法しか、思い付かない。
祐輔はゾクゾクする感覚に背中を反らした。すると蓮香の下半身と身体が擦れ、羞恥とは違った感情で顔が熱くなる。
「こんなっ、ことばっかしてないで、少しは恋人……っ、あっ!」
「恋人らしいこと? 今してるじゃないですか」
「お前はエロしか頭にないのかよっ。んんん、やだ、止め……っ」
もうジンジンするほど硬くなった胸の粒に、蓮香はシャツ越しに優しく触れる。焦れったいけれど、確実に快感を拾ってしまい、祐輔は悶えた。
「祐輔さんはここで何回もイケますもんね……女の子みたいに」
カリカリと胸を爪で引っ掻く蓮香は、腰を動かし熱くて硬いものを押し付けて擦りつけてくる。途端に覚えがある感覚が祐輔を支配し、太ももと腰が震えた。
「あ……だめイク……イク……!」
腰から何かがせり上がってくる。頭がぼーっとし、声もなく喘ぐ。そして次の瞬間。
「……──ッ!!」
せり上がってきた何かが脳に到達した時、祐輔の身体は硬直し、ガクガクと腰を震わせた。
身体から力が抜けて、はあはあと詰めていた息を戻すと、蓮香は祐輔の服を脱がしにかかる。
これはもう、言っても無駄だ、と祐輔は諦めてされるがまま裸になり、同じく全て服を脱ぎ去った蓮香の深いキスを受け入れた。
ぬるぬると、口内を動く蓮香の舌に、自らも舌を絡ませ、降りてくる蓮香の唾液を飲み込む。
(せっかくおかず待ってきたのに……結局こうなるんだな……)
そう思って蓮香の愛撫を全て受け入れた。男らしく大きくて、ゴツゴツした手なのに、触れる力は柔らかい。何をされても気持ちよくて、何が何だか分からなくなっていく。
「祐輔さん……」
熱の篭った声で呼ばれ彼を見ると、切なげな表情をした蓮香が、するりと太ももの内側を撫で上げた。肩を震わせた祐輔は、そのまま自分の中心まで撫でてくれるのだろうか、と期待したけれど、その手は思わぬ方向へ這っていく。
「……え……?」
朦朧としていたのですぐに反応できずにいたが、蓮香が触れた場所は前ではなく、後ろだった。思わず腰を浮かせて逃げようとするけれど、彼の手はしつこく追ってきて、尻の狭間に入ってくる。
「ちょ、そんなとこ触るなよ……っ」
「祐輔さん、男同士のセックスって、ここ使うんですって。試してみません?」
あ、こいつまた人の話を聞いてないな、と祐輔は蓮香を睨みつけた。いくらなんでも、いい大人なのでそこを使うのは聞いたことがある。けれど同時に、それなりに準備が必要で、感じられるまでにも時間がかかるということも。
「試すかっ、そんな……」
「前立腺マッサージをすると、乳首でイクのと同じくらい気持ちいいみたいですよ?」
祐輔さんイキやすいみたいですし、素質あるかも、と言われ、そんな素質いらん、と押し問答を続けた。
しかし結局、祐輔は流されてしまうのだ。
「う、……早く入れろよ……」
浴室に移動した二人は、祐輔の後ろを蓮香にレクチャーされながら洗う。どうしてそんなことを知っているのか、と尋ねたら、祐輔さんとするために調べましたと返ってきて、なぜか顔が熱くなった。
祐輔はバスタブに手を掛けて四つん這いになり、尻を蓮香に向けながら悶える。彼はずっと後ろの孔を覗きながら周りを指で揉んでいて、時折誰も触ったことのない蕾に触れてくる。当然ながら、そこを触られることに慣れていない祐輔は、優しく撫でられる擽ったさに、身を捩りたくなるのだ。
「ダメです。丁寧にしないと怪我しますから」
「……っ、メシもまだだし、午前様で近所に変な噂されたら……って、うあ……っ」
予告もなしに入ってきた指に、祐輔は呻く。滑りよく引っかからずに入れられたと思ったら、何かを使っているらしい。ぬちぬちと水っぽい音がして、途端に恥ずかしさが増した。
「……世間体とかそんなに大事ですか? あー……祐輔さんの中、温かい……」
後ろからうっとりした声がして、祐輔はなぜかゾクゾクする。自分を見て、触って興奮しているのは男で、部下なのに、と思うけれど、息はもう上がってしまっていた。
「祐輔さん? 大丈夫です?」
「……っ、ふ……っ」
沈黙が不安だったのだろう、蓮香は祐輔の顔を覗き込むように見てきて、祐輔はバスタブの端に突っ伏して顔を隠す。
どうして、こんなところを触られて、自分は感じているのだろう? 下半身がゾクゾクして、遅れてじわりと顔が熱くなった。信じられないことにそのゾクゾクは、少しずつ、少しずつ強くなっている気がする。
祐輔は声が出てしまいそうで、腕で口を塞いだ。顔を隠していたけれど、声を出すよりマシだと身動ぎすると、うわ、と蓮香が声を上げる。
「すっごい締め付けて……指が抜けないですよ?」
ほら、と蓮香は指を抜き差しする動きに変えた。途端に祐輔の背中が反り上がり、声を上げてしまう。思わず口を手で塞ぎ、反対の手で蓮香の手を止めようと手を伸ばした、その時。
「……っ! ……ああっ」
覚えのある感覚が祐輔を支配する。全身が硬直し、頭が真っ白になって、身体を強い快感が突き抜けた。
「すご……本当にイッちゃったんですか?」
初めてなのに、と蓮香もこのできごとにかなり興奮したらしい。背中にキスの雨を降らしてきて、祐輔は悶える。
「……ぅあ、だっ……やめろっ」
しかし祐輔の抵抗など、最初から無いようなものだ。蓮香は指を抜くと、彼の自身をあてがってくる。
指でだってまだ十分広げられていないのに、無理に決まっている、そんなの入るわけがない、と祐輔は抵抗した。しかし、予想に反して祐輔は蓮香を受け入れることができた。できただけでとても苦しいけれど。
「祐輔さん……祐輔さん祐輔さん……っ」
「はぁっ、あっ、あっ……く……っ」
背中で聞こえる蓮香の声が、また泣いているようだった。祐輔はできるだけ力を抜き、中で暴れる蓮香の凶暴なモノを優しく包み込む。
「好き、好きです……っ、ずっと……。想像してたより、遥かに気持ちいい……っ」
そう言いながら蓮香は腰を動かし、すぐに果てた。熱いものが中に注がれ、祐輔の後ろは意図せずそれを零すまいと蓮香を締めつける。
ふうふうと口を手で塞ぎながら思ったのは、ここまで身体を許せる相手だった、ということだ。そしてさらに、それが嫌じゃないことも。何で、どうしてと混乱しつつも、湧き上がる欲と熱は収まらない。
「ああ……もたなかった……。すみません、今度は祐輔さんの番ですね」
そう言って出ていった蓮香を振り返り、祐輔は自ら彼にキスをした。
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