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第13話

*** 瞼の裏に眩しさを感じて目を開けた。一瞬記憶が飛んでいて、夢の世界にいるのかと錯覚される。涼やかな白い壁の広い部屋、ガラスの天井には今はブラインドがかけられ、その隙間から森林に差す木漏れ日のように光が落ちて来ている。どうやら嵐は去ったようだ。 貴弥はあわてて上体を起こした。体がフワリと弾むように揺れて、昨夜の記憶が戻って来る。キングサイズのベッドの隣、すでに恭平の姿はない。  あり得ないことに、どうやら熟睡してしまったらしい。他人の家の他人のベッドで時間を忘れて眠るなどと、これまでの貴弥には考えられないことで、我ながら驚く。  意識が明瞭になると共に普段の自分が戻り、時間が気になってきた。腕時計を見る。 「っ……!」  ない。片時も放さなかったシャープクロスがない。昨夜風呂から上がったときには確かに付けていた記憶があるから、失くなったのはその後のことだ。  おそらく、恭平が取って行ったのだ。間違いない。  いつまでも寝転がっていたい心地よさを振り切り、貴弥はベッドから降りた。その拍子に、ヒラリとメモ紙のようなものが一緒に床に落ちる。拾い上げると、子供の頃からほとんど成長していない、うまいとはお世辞にも言い難い豪快な字でメッセージがしたためられていた。 『目が覚めたらクラブに来るように。人質を預かってる』  メッセージの裏にはクラブの、一般には知られていない職員通用口を示した地図が描いてある。月の第四金曜日の今日、『NEXT』は休館のはずだった。

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