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13.一方その頃、人の国では

※三人称です。人の国では何が起こっていたのでしょうか。 ーーーーー  元勇者が魔王のイチモツでずっこんばっこんと犯されて善がりまくっている頃、人間の国は騒然となっていた。  三年ぶりに、転移魔法という高度な魔法で送還されてきたのは、勇者に付き従っていた王女一行であった。もちろん勇者はいない。  そしてその三年の間に王は崩御し、第一王子が王となっていた。  幸いなことに、第一王子と王女の仲は悪くなかった。 「マリー、お前たちは勇者を魔王城の前に置いて戻ってきたというのか?」 「違いますわ。勇者様は私たちを守る為に送り返してくださったのです。私たちも、戦えるのに」 「確かに……そなたたちの魔力はかつてないほどに増大しているようだな……」  王女一行は玉座の間に送還されたことで話は早かったが、まさか王が亡くなっているとは思わなかったので些か混乱はした。王が崩御したことで王女は王女ではなくなってしまったが、仮にも勇者パーティーとして魔の国へ向かった者たちである。兄王も彼女たちを無碍にはできず、その魔力量を水晶玉で測ることにした。  その結果、彼女たちの魔力量はかつての勇者ほどはないものの、国内ではトップレベルの魔力量を誇っていることがわかった。  魔力量が多い物は魔法を使えなかったとしても強い。気配の察知なども得意なので、気に食わないからといって暗殺もできない。  王としては王女たちをいたずらに遊ばせておくことはできず、勇者が帰ってくるまで国内にいる魔族や魔物たちを彼女たちに討伐させることにした。彼女たちは勇者の不在を忘れるかのように果敢に戦い、国内で悪さをする魔族や魔物たちを順調に掃討していった。  そして三日が経った今日、勇者の剣がかつての石の上に戻った。  それは勇者が魔王に敗れたことを意味していた。  王女たちは悲嘆した。 「やっぱり、何がなんでも同行するんだった……あんなに、素敵な方はいなかったのに」  王女―マリーは呟いた。 「そうね。これから勇者の弔いでまた魔王城を目指しましょうか。でも、さすがにもう三年はかけられないわ」  マリーの友人が涙をこらえながら提案した。 「確かに三年もかかるのは困ります。ここは魔族を捕まえて道案内をさせましょう」  マリーの護衛を務める女剣士もまた乗り気だった。 「そうですね! 姫さま、魔王を倒しにいきましょう!」  マリーの侍女もまた拳を握りしめた。  慌てたのは王である。 「待て。せっかく戻ってきたというのにまた魔の国へ向かうというのか?」 「はい。兄王も私のような者が国内にいては目障りでしょう。魔王を倒しましたら別の国へでも参りたいと思います。兄王には迷惑をかけませんので、再び出立することをお許しください」 「いやいや……魔王の討伐に再度向かうというのならば勇者の剣を持って行ってもらわなければならぬ。そなたたちの中で抜ける者はいるのか?」 「試してみましょう」  男しか抜けないと聞いてはいたが、試してみてもいいのではないかと彼女たちは思った。  そして人気のない夜に、騎士たちの立ち合いの元抜いてみようとしたが、剣はびくともしなかった。 「やっぱり勇者様でなければだめなのね……」  王女は涙をどうにか堪えたが、とても悲しかった。せめてこの剣だけでも持って、勇者の敵を討ちにいきたかった。  結果を聞いた王は微妙な顔をした。女に勇者の剣が抜けなかったのは喜ばしいことだと王はほっとしたが、ならばどれほど待てばまた剣を引き抜ける者が現れるのだろうか。かつて勇者の剣を抜き、魔王を屠った勇者は千年も昔の者である。  誰かが抜くのを待っていたら王女たちは勝手に国を出て行ってしまうだろう。  それならばいっそのこと毒殺とも考えたが、魔力量が多い者には毒も効かない。現王にとって妹たちの存在はとにかく厄介だった。 「大々的に布告をしよう。新たな勇者を求むと」  王は王女たちの絵を描かせ、勇者の剣を抜いた者は勇者として彼女たちと魔王を倒す為の旅に出られると喧伝した。  マリーたちは三年経っているとはいえ、その美貌に衰えはなかった。そんな美女たちと旅に出られるならばと、国中の若者たちは瞬く間に王都へ集まったのだった。  それを魔王はこっそり確認していた。  面白いことになりそうだとほくそ笑む。 「イオール、魔力の多い人間たちがまたやってきそうだぞ」 「それはいいですね。こちらに取り込んでしまいましょうか」 「そうだな。あの魔力を抱えて人間の国で暮らすのはつらかろう。もしかしたらクルトの顔を見せる必要もあるかもしれぬが、クルトが私の妻として幸せに暮らしていると知れば安心するだろう」 「もし抵抗したらどうしましょうか?」 「仮にも勇者パーティーとして国に足を踏み入れた者たちだ。負けた時の作法ぐらいわかっているだろう。そうでなければ、逆らう気が起きなくなるぐらい犯してしまえばいい」 「そうですね」  かつての勇者が久しぶりに深く眠っている横で、魔王とイオールはそんな話をしていた。  そんな元勇者は、夢の中で淫魔たちに犯され、あまりの気持ちよさに啼かされていたというのは余談である。

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