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第26話 一の怪24
真実のまま話したのならば……。
「あの、甲斐さん、ちょっと話は変わりますが、訊いてもらいたい話があるんです。あの、俺の友達の話なんですけど」
必殺、友達の話。
これだ。
俺は天才か。
ベターだが、これ以上に無いほどの秘密の相談の持ち掛け方だ。
真実をありのままに話すのではなく、あくまでも友達の話として話に着色をして甲斐に話してやるのだ。
そうすれば、霊に悩んでいるという事を隠して話を聞いてもらえる。
「友達の話、ですか。別にいいですけど」
そう言う甲斐の顔に面倒くさそうな様子は見られない。
と言うよりも、甲斐の顔はボケっとしていてどんな感情も窺えなかったが、だが、よし、良い展開だ。
俺のストレスをこれ以上貯めこまない為に、この男にゴトウさんからの酷い仕打ちについての愚痴を聞いてもらおう。
あくまで、友達の話として。
「ありがとうございます」
俺は、作りものの笑顔で自分に都合の良い作り話を始めた。
「あの……俺の友達が、その、えーっと、彼には、そう、彼女がいるんですけど、その彼女から友達の家に昼夜問わずどころか一日中電話がかかって来るそうで、それで、友達が参っちゃって。いくら彼女からでも、一日中電話がかかってくるようじゃ電話の音がうるさくて頭がおかしくなるって。それで、どうしたら良いのかって友達は悩んでて、っていうか、病んでてですね」
「はぁ」
「あの、この話、甲斐さん、どう思います?」
「どうって、その彼女さんが何か面倒臭いですね。そんな、昼夜問わず連絡してくるような女、俺なら迷惑だな。ていうか、可能なんです? 一日中電話するって。彼女さん、仕事とかしてない人です?」
知らねーよ。
作り話のことだ。
「さ、さぁ、そこまでは。何せ、友達の彼女のことですからね」
「ああ、そうでしたね」
「そうですよ」
俺は力強く言った。
「お友達は彼女さんからのその電話を止めてもらいたいんですね」
「はい、その通りです」
今すぐにでも止めてもらいたい。
「彼女さんには電話を止める様にお願いしたんですか、そのお友達は?」
「もちろん言いましたよ、その友達が。でも、全然聞いてもらえなくて、その友達が」
「そうですか、それは大変ですね。それで?」
甲斐はコーヒーを啜りながら俺の話を静かに聞いた。
俺の口からはゴトウさんに対する不満や鬱憤が友達の話として噴水の様に溢れ出た。
「その彼女からの電話が本当にしつこくて、電話の音で夜も満足に眠れないほどで、友達は食欲も無くなって酒に逃げる様になってしまって」
俺の話を聞いて、甲斐は、なるほど、と頷いた。
「お友達も、お気の毒ですね」
「ですよね、そう思いますよね!」
ああっ、架空の友達万歳。
やはり、持つべきものは友達だ。
リアルにこんな状況に悩む友達がいたなら、俺が親身になって相談に乗ってやろう。
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