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第41話 二の怪7
そして、オヤジにストーキングされる南を想像してみた。
その結果に、俺は眉をひそめる。
口ひげを生やし、腹の出た中年のオヤジが南を付け回している、という絵が俺の頭の中に浮かんだからだ。
ああ、神様、どうか、南のストーカーが美少女でありますように、と俺は心から祈る。
駅に電車が入って来た。
南は周りを気にした様子をしながら車両に乗り込んだ。
俺は南がいる車両の隣の車両に乗ると、南の乗る車両の見える連結部の扉の前にさり気ない感じで立ち、こちらの車両の扉のガラス越しから南の姿を探した。
南の姿を見つける。
南は俺から表情が確認できる位置にいて、吊革に掴まっていた。
南から少し離れた場所に平川の姿がチラリと見えた。
葛はどこにいるのか分からなかったが、まぁ、南とそう遠くない所にいるのだろう。
電車が動き出した。
どこにも掴まっていなかった俺は、電車の揺れに合わせてこけそうになる。
慌てて手すりに掴まる。
そうして、南の方を見た。
横顔の南は俯き、眉間に皺を寄せていた。
あの南が、と思わせる表情だ。
南の吊革に捕まる手には力がこもっている様に見える。
南が今、どんな気持ちでいるのかは知れないが、愉快でいる事は無いであろうことは明らかだった。
俺の手すりに掴まっていない方の手のひらは気が付けば握り締めていた指の爪が食い込んでいた。
もしも、本当に南にストーカーがいるのならば、絶対に捕まえて一発殴ってやりたい。
俺は、南の周囲に目を光らせる。
南のストーカーに怒りを抱いた気持ちで周りを見てみると、南を取り巻いている全てのやつが怪しく思えてくるから不思議だ。
南の後ろの座席に座っているセミロングの若い女も怪しい人物の中の一人だ。
彼女は、さっきから、ずっと、南の背中をジッと見つめている。
パーカーのポケットでスマートフォンが震える。
スマートフォンをポケットから取り出して見ると、平川からグループチャットが入っている。
チャットを読んでみると、南の後ろに座っている女が南をずっと見てる、とあった。
俺は直ぐに、俺も見えてる、怪しいな、と返信する。
俺は、視線をスマートフォンから南の方へ移した。
グループチャットで俺達のやり取りを確認したらしい南が後ろを気にしているのが見える。
あんなに不安そうな顔をして、可愛そうに、と、俺は心から南に同情した。
しばらくの間、女を見張る。
女はだだ、南を見ていた。
電車がトンネルに入る。
ガタンゴトンと電車の揺れる音と、周りの雑音と、南と女と……俺の頭はグルグル回る。
トンネルを抜けると、車内放送が流れ、次の停車駅を伝える。
電車は速度を緩めてゆっくりと駅に停車した。
女が席を立ち、開いた扉から電車の外へ出て行った。
それを見た俺は、気が付けば女の後を追って電車の外へ出ていた。
そして、去って行こうとする女の肩を後ろから掴む。
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