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第43話 二の怪9

 グループチャットで平川に、俺と葛はこの後も南の後をついて行くと連絡する。  平川からの返信は、了解、俺も行く、だった。  南から、すまない、と返信が来る。  すでに、フェードアウトした連中からは激励のメッセージが届く。  任せとけ、と俺達三銃士はそれに応える。  駅を出て、南の後をつかず離れずの距離で歩いてしばらく、何事も無かった。  怪しい人物どころか猫の子一匹見当たらない。  あまりの変化の無さに、今日はこのまま何事も無く過ぎるのかと思った。  いたずらに時間ばかりが過ぎてゆき、そして、もう直ぐ南の家という所まで俺達はやって来た。  南の家は町はずれにある団地で、四角い団地の六号棟の一番端の四階が南の家だった。  俺は、目の前の六号棟を見上げた。  そして、沈みかけている夕日に照らされたあるものを見て、それに目を止めた。  南の住む一番端の四階の階段の踊り場の柵から身を乗り出して、下を見下ろしているやつがいた。  どうも、南の事を見ている様に思える。  不審そうに俺がそいつを見ていると、顔を上げたそいつと目が合う。  そいつは、俺と目が合うと、スッと姿を消した。  遠目から見たし、一瞬の事だったのでどんなやつかは分からなかった。  南の事を見ていたと思えたのも俺の気のせいかも知れない。  パーカーのポケットでスマートフォンが存在を主張する。  グループチャットだ。  スマートフォンをポケットから取り出し、見ると、南からの連絡だった。 『家、着いちゃったけど、どうしたらいい?』  スマートフォンから顔を上げて南の方を見みれば、六号棟の前で、ぽつんと、お預けを食らった犬のように立っている南の姿が見える。 『そのまま帰って良いんじゃねーか?』と、友人の一人から返信が来る。 『だな、今日は収穫無しだ。また次だな』と、葛からの返信。  今日はここで、解散、と言う空気だ。  いや待て、さっきのやつは? と俺は再び六号棟を見上げた。  すると、駆け足で階段を下りてくるやつがいる。  俺は急いでグループチャットにメッセージを書き込む。 『南、これからお前んちの入り口から出てくるやつの顔、覚えとけ』  チャットを確認したであろう南が困惑を顔に張り付けて後ろを振り返る。  隠れている俺と南の目が合った。  俺は、身振りで、良いから覚えとけ、と南に伝える。  葛、平川、他の仲間から、どうした? 何かあったのか? とメッセージがグループチャットに届く。 『怪しいやつがいる』  俺は皆にグループチャットでそう伝えた。  南が六号棟を振り返るのと、そいつが入り口から出てくるのは同時だった。  南は怖いのか、一瞬俺の方を振り返るが、しかし、そいつの方へと向き直り、南より背の高い、そいつを見上げていた。  そいつは速足で南の横をすり抜けた。  南がそいつの去ってゆく後ろ姿をぼんやりと眺める。  俺は、グループチャットにメッセージを打ち込む。 『南、今のやつの顔、見たか?』  南から返信が来る。

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