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第46話 二の怪12

 グループチャットで見る『分った』という南の返事は、何処か心細そうで、俺は思わず『俺達がちゃんと見てるから大丈夫だ』と書き込んだ。 『ああ』と南から返信が来る。  俺に続いて他の友人達からもグループチャットに南への激励のメッセージが飛んだ。 『サンキュー。頑張るわ』  その言葉を見た俺は前をグッと向いて校門を目指した。  俺の目の先には既に校門を出ようとしている葛と平川の姿が。  遅れを取るまい、と俺の足は早まった。  校門を出て、直ぐ左を向くと葛と平川が少し遠くで二人揃って電柱の陰に身を隠しているのが見えた。  俺からは見えないが二人の直ぐ近くに南と、あのストーカー男がいるのだろう。  他の友人達も、ああやって何処かに潜んでいるのか。  皆から完璧に後れを取っている俺は駆け出す勢いで道を行く。  電柱の陰で息をひそめている葛と平川の隣に着くころには息が上がっていた。  葛と平川は俺の方をチラリと見ると無言で視線を道の先に真っすぐ伸ばした。  俺も二人と同じ方を向く。  目を細めて見てみると、あのストーカー男の後ろ姿が微かに見える。  俺は両手を握りしめた。  数秒後。  後、少しでストーカー男の姿が視界から消えると思った時。 「行くぞ」  葛の囁き声に平川が瞬時に動く。  電柱の陰から出て来た二人の後にそそくさと付く俺。  慎重に、しかし少し足を速めて進んで行くとストーカー男の姿を確認出来る所まで来た。  その前を歩いているはずの南の姿は見えない。  俺達はストーカー男と距離を取って進む。 『もう直ぐ、袋小路に着く』  南からのメッセージがグループチャットに躍る。  緊張感が高まる。  南も同じだろうか。  皆、俺の様に神経をとがらせているのだろうか。  胸がドキドキと音を鳴らしている。  ふと、前を見ればストーカー男が足を速めて歩き出したのが分かった。  俺達三人は夢中という言葉に相応しくストーカー男の背中を射抜く様に見て男の後を付ける。 『南が袋小路に入るぜ』  そのメッセージが誰のものかなんて確認しなかった。  前を行くストーカー男が突然走り出した。  俺は何にも考えずに固いアスファルトを強く踏み込んで走った。  葛も平川もだ。  ストーカー男が袋小路に入って行くのと、その後を他の友人達がなだれ込む様に袋小路に入ったのが見える。  全速力で駆ける俺と葛と平川が袋小路に入った瞬間「そいつ、捕まえろ!」と誰かの叫び声が響いた。  見るとストーカー男がこっちに向かって走って来ていた。  何が起こったのか。  男の後を友人達が血相を変えて追い掛けている。  その後ろに南が見えた。  南は口をあんぐりと開けたまま地面に坐り込んでいる。  俺の横に並んでいた平川がストーカー男の方に向かって駆け出す。

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