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第47話 二の怪13
その後に葛が続く。
俺は、ただ慌てた気持ちのまま息を呑んでその場にとどまっていた。
平川がストーカー男を取り押さえる。
激しく抵抗するストーカー男。
しかし、平川はストーカー男を必死の形相で取り押さえている。
大人しい平川の何処からそんな行動力が出て来るのか。
お前は本当に平川なのか?
「離せ! 離せ!」とストーカー男が喚く。
しかし、平川は死んでも離さない勢いだ。
それに葛も加わって、もうこれでジ・エンドと思われた。
しかし。
あろう事かストーカー男は、どうやったのか自分を取り押さえる二人から逃れて袋小路の外を目指して走り出した。
袋小路の入り口にいるのは、ただ今俺一人となる。
「え」
思わず、ぼけた声が出た。
ストーカー男は、どんどん俺の方に迫って来ている。
「片葉、捕まえろ!」
何人かの声が響く。
「うわぁぁぁっ!」とストーカー男は叫び声を上げながら何故か俺の方に突進してくる。
俺の心臓が痛いほど鼓動する。
ストーカー男はもう目の前だ。
「うぉぉぉぉぉぉーっ!」と唸り声を上げてストーカー男が俺に飛び掛かる。
「うわっ!」
俺は叫びながら、ストーカー男に蹴りを入れていた。
一発殴ってやろう、とは思っていたが、温厚な俺は暴力なんか、望むところでは無かった。
が、自然と足が動いていたんだ。
俺の、めちゃくちゃの蹴りは、何とストーカー男の股間にヒットした。
「うごっ!」
そう声を出すとストーカー男はその場にしゃがみ込んだ。
それと同時に友人達が一斉にストーカー男を取り囲んだ。
俺もその輪の中に、しれっと混じる。
股間を押さえながら膝をついて悶絶しているストーカー男を俺達は黙って睨み付けていた。
袋小路のどん詰まりで静かに事の成り行きを見守っていた南が、そっと近付いて来て平川の後ろで苦しんでいるストーカー男を眉を顰めて見下ろす。
こうして改めて見るストーカー男は結構若かった。
まだ大学生くらいだろうか。
普通の若者に見えるのに、何故ストーカー何かしたのか。
いや、世の中、こういうやつの方こそストーカーになり得るのかも知れない。
ストーカー男は散々唸り声を上げた後に俺達を見上げると顔を青くして黙ってしまった。
当然だ。
俺達の見た目の柄の悪さといったらまるで不良少年だ。
俺達自身はちょっぴりやんちゃな健全な若者であるのに……。
世の中見た目が九割だ。
怯えている男に向かって第一声を上げたのは平川だった。
「おい、お前! 何で南の後を付け回してるんだよ!」
ストーカー男に向かって唾を飛ばす平川。
「ストーカー何て気持ちの悪い事しやがって! 事と次第によっては警察呼ぶぞ!」と友人Bが吠える。
怒り心頭の俺達からはストーカー男を罵る様々な台詞が次々と溢れ出た。
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