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第48話 二の怪14

 ストーカー男は怯えた表情を浮かべて、「ち、違う! 違うんだ!」とのたまった。 「何が違うんだよ!」と平川が拳を振り上げる。  ストーカー男は、「ひぃ!」とみっともない声を上げると身を固くした。  ストーカー男に蹴りを入れておいてなんだが、やはり暴力はダメだと、俺は平川の拳を押さえた。  平川は不満そうに俺を見ると再びストーカー男を睨み付けた。  平川がストーカー男に何もしないであろう事を確信した俺はストーカー男に問う。 「おい、あんた。何で南の後を付け回してたんだ。どれだけ南が怖かったか分るか? 理由によっては本当に警察を呼ぶし、俺達もお前の事を一生許さない!」  俺の台詞にストーカー男は、「うううっ……」と言って鼻水を啜ると途切れ途切れの声で話し出した。 「後を付けるとか……そんな真似してすみませんでした……その子の事が好きで、電車で見て一目惚れして。ついついやってしまいました……ううっ……すみませんでしたぁ」  ストーカー男の告白に俺達は、呆気に取られた。  男が男をストーキングする何て現実にも十分唖然としていたが、それに加えてこの男は南の事が好きだと言う。  これは一体全体どういう展開何だろうか?  同性愛に対して偏見は無かった俺だが、実際に同性愛者を見たのはこれが初めてで、しかも相手は南のストーカーで。  インパクトあり過ぎだ。 「南が好きって……南は男だぞ」と言う声が誰からか漏れた。  その台詞に男は、「へっ?」と目を丸くして言った。  ストーカー男の反応に俺達も、「へっ?」と口を揃えて言う。  ストーカー男は目をパチパチさせて平川の後ろに隠れている南の顔を伺った。  南はギュっと眼を瞑って下を向いていた。 「何見てんだよ!」と平川が言うとストーカー男は、ビクッと体を震えさせて、「だって、その子が男だなんて思わなかったから」とのたまった。 「は?」と俺達は言った。  南すら言っていた。 「つまりその、あれか? 南を女の子と間違えて好きになって南を付け回してた訳で、男が好きとかじゃあない訳?」  友人Aの質問に、男は、「はい」と答える。 「何だよそれ」と葛。  本当にそうだ。  何だよこれ。  場に気まずい雰囲気が漂う。  誰も口を聞こうとはせず、沈黙の時間は永遠かと思われた。 「あの」  ストーカー男がそう言って沈黙を破った。 「何だよ!」  平川が思い出したかの様に睨みを利かせてストーカー男を見る。  平川の後ろでは困惑した表情を浮かべた南がストーカー男の様子を伺っている。  ストーカー男は小さく唸った後に「俺、もうその子の事、絶対に付け回したりしないんで勘弁して貰えますか?」と訊ねて来た。 「そんな事信用できるか!」と俺が突っ込みを入れると、ストーカー男は意外にも真面目な顔をして、「いや。その子の事、女の子と思ってたから好きになったんだけど。男じゃあ……なんか、もういいかなって」と言う。 「はぁ? 一目惚れとか言ってたろ!」  俺の追及にストーカー男は「俺の恋愛対象は女の子何で。男には興味がありません。だから、その子が男と知った以上はもう興味も何も無いんです。もう、俺めちゃくちゃ冷めてて。だから、もう本当に後とか付けないですから勘弁して貰っても良いですか?」と冷めた事を言うのだった。

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