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第8話 媚薬

「あっ……んっ……や……」  温度と湿度の高い場所に長時間いるせいなのか頭がぼんやりとしてくる。男はフワッフワの泡で俺の体を撫で回していて、それが敏感な部分に触れるたびに変な声が出てしまう。 「やっと媚薬が効いてきたみたいだね。直腸からならもう少し早く回るかと思ったけど意外と時間が掛かったなぁ」 「び、びやく……?ふあっ……ぁん……」  びやく……媚薬ってあの、飲んだらエロい気分になって感度100倍!なんていう、あの……?漫画やAVだけの架空のものだと思ってたのに、まさか本当に存在するとは。 「やっやだぁ……そんなのっ……ぁあっ……」 「イツキはそういうのが嫌いなのか。僕も迷ったんだけどね。でも、やっぱり初めては一番気持ちいい思い出にしたくて」  そう言っているうちにもその効果が出てきているのか、段々と全身の力が抜けるようで、何も考えられなくなってくる。 「普段の餌にもクスリは混ぜていたから、何もしなくても僕好みの体になっていることは知ってたんだけどね。許してくれるかな、張り切り過ぎちゃう旦那様のこと」  再びサァァと音がしてシャワーを体に当てられる。その刺激に体が勝手にビクビクと跳ねてしまい、俺はこいつの話す言葉の意味を全く理解できていなかった。 「あっあっあっ……やっ……おかっ……おかしっなっ……」 「可愛いイツキ。まるで僕を誘うため踊っているみたいだ」  しばらくしてそのもどかしい刺激がやみ、俺の体は拘束を解かれた。  あぁ、逃げなきゃ……。何もせずに犯されるくらいなら、ボコボコにされて死んだ方がマシだ……。 「さぁ、イツキ。僕の愛しい淫らなプリンセス。愛の巣へ戻ろう」  逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ……。 「あっ……はっ……ん……」 「いやらしすぎて見ていられないよ。ここももうこんなに……でも、初めては寝室で、そう決めていたんだ。そのためにあの部屋を作ったんだから」  逃げなきゃ、その言葉が頭の中をグルグルと駆け巡るのに、俺は体の動かし方を忘れてしまったかのようにぐったりとそこに横たわっていた。その時、ふわりと掛けられたバスローブのような物の刺激が俺の思考を完全に奪ってしまう。  ダメだ、気持ちいい。体に触れるもの、ぜんぶきもちい……。

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