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よくできました 6
オレを見上げる大きな少し茶色い瞳も。
ちょっと恥ずかしそうに赤く染まっている、滑らかなきめの細かい肌に覆(おお)われた頬も。
オレを揶揄(からか)うようなことばかり言うくせに、口吻(くちづ)けると素直に吸い付いてくる真っ赤な口唇も。
熱く、嬉しそうに搦めてくる舌も。
オレの体にしがみついてくる、震える細い腕も。
抱きしめた時に鼻腔(びくう)をくすぐる、甘ったるい、香水と体臭の混じった匂いも。
口の中に広がる、気が狂いそうに甘美な、唾液の味も。
全部、欲しい。
欲しくて堪(たま)らない。
頭がおかしくなる。
触れたくて、感じたくて、舐めたくて。
食いちぎりたくて。
飲み干したい。
体も声も体温も匂いも涙も吐息も、オレと一つになって欲しいと、思う。
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと・・・・・・。
そんなことを望んで、願って、祈って、泣いていた。
さすがにこんなこと誰にも言えないから、ずっと隠しているけど。
それでもきっと緋音さんは知っていると思う。
オレのこの醜い欲望を、有り得ない願望を、汚らしい祈りを。
緋音さんは知っていて、何も言わずに、オレを受け入れてくれている。
気持ち悪いとか、うざいとか言ってオレを突き放すこともできるのに。
オレを揶揄(からか)って遊んだりするけど、それでも。
そういう根本的な部分というか、笑ったり馬鹿にしたりできない最奥の部分は、絶対にそっと包み込んでくれる。
優しく微笑んで、オレを全部受け入れて、抱きしめてくれる。
そんな人。
そんな人だから。
連れ去ることもできない。
混ざり合うこともできない。
逃げることもできない。
離れることもできない。
佇(たたず)んで見つめて、朽ちていくことしか、できない。
それでも。
わかっていても。
知っていても。感じていても。納得していても。理解していても。
離れないで・・・。
それだけ。それだけがオレの中で残って。それだけを伝えたくて。
緋音さんの指を手をそっと包み込んで。
丁寧に舐めて、吸って、愛撫を続けた。
溢(こぼ)れる激情を抑え込んで、緋音さんの欲望を煽(あお)るように。
根本の指の間は緋音さんの性感帯だから、じっくりとねっとりと、舌を押し付けるようにしてなぞる。
細くて嫋(たお)やかな指を根元から、爪先に向かってゆっくりと舐めあげる。
爪先を口に含んで、軽く、本当に軽く、甘噛(あまが)みして刺激する。
そんなことを執拗に繰り返していたら、緋音さんが顔を真っ赤にさせたまま、口元を白い華奢(きゃしゃ)な手で覆(おお)って、潤んだ瞳を伏せて、必死に何かに堪(こら)えていた。
ああ・・・緋音さんが、発情してる。
久しぶりに見る。
大好きな表情。オレを求めてくれる瞳とか、喘ぎ声を我慢している口唇とか。
体の奥から込み上げてくるそういうのを我慢して、しすぎて、顔をそむけて、白い頬を真っ赤にして、深紅の口唇を噛み締めて、必死に堪えている。
その様子が可愛くて、奇麗で。
艶やかで。嫋(たお)やかで。
奇麗。
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