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よくできました 7
奇麗でいやらしくて。欲を煽(あお)ってくる。
今すぐこの場で突っ込んで、犯したくなる。
でも、それは無理だから、オレは指を手を嬲(なぶ)るのを、やめる。
いきなりやめたオレを、緋音さんが呆気(あっけ)に取られたように、キョトンとして見る。
うっすらと、目の縁に涙をにじませて、紅い口唇から吐息を吐き出して、何度も瞬きを繰り返している。
オレは軽く息を吐き出して、暴走しそうな激情を抑えると、ゆっくりと体を起こしてから、緋音さんを軽く引っ張って抱き寄せる。
トランクの外まで抱き寄せると、緋音さんは地面にふわりと降り立つ。体重を感じさせないその仕草に思わず見惚(みと)れる。
緋音さんは顔を赤くしたまま、荒い呼吸を繰り返して少しずつ、激情を落ち着かせている。
伏せられた瞳を縁取(ふちど)っている長い、黒い睫毛(まつげ)が微かに震えているのが、好き。
真っ赤な口唇が、鮮やかな血の色の口唇がお互いの唾液で濡れたままで、開いたり閉じたりを繰り返していて、好き。
対照的な真っ白な肌が艶(つや)っぽく煌(きら)めいて、首筋に貼り付いた髪が妙に扇情的(せんじょうてき)で、好き。
オレは呼吸が荒くなって顔を真っ赤に染めている緋音さんを、ゆっくりとエスコートして車の助手席に乗せる。
トランクを締めて鍵をかけて、オレは急いで運転席に座って、車を発進させた。
なるべく早く家に帰って、できればそのまま、そのままエッチをしたいなと・・・。
思っていたけど。
車が高速に乗って東京の緋音さんの自宅を目指して走っていると、次第に緋音さんの中の欲情がおさまってきてしまって。
助手席に座っている緋音さんは、窓の外の景色を見ながら、日本に帰ってきた安心感を感じると言って微笑んでいる。
まあ・・・そうなるよね・・・。
ちょっと残念に思いながらも、緋音さんの心底安心したような、子供のような笑顔を見ていた。
緋音さんが無事に帰ってきた。
それだけでも感謝しなくては。
それだけで、満足しなくちゃ。
*
珀英の運転する緋音の車は、順調に首都高を走り抜けて都内に入り、どこにも寄ることもなく緋音のマンションの地下駐車場に滑り込んだ。
珀英は借りているスペースに車を停めると、トランクから荷物を出して、助手席のドアを開けた。
緋音は珀英がドアを開けるのを大人しく待ったままで、久しぶりの自分の車を楽しんでいた。
座席の座り心地を重視したので、備え付けではなく好きなシートを選んで取り付けてもらったので、この車のシートで腰が痛くなったことは、ない。
ゆっくりと、珀英がドアを開けて、自分に向かってつい・・・っと手を差し伸べたので、緋音は慣れた手つきでその手を取って、車の外へ出た。
するりと、滑るように嫋やかに車から降りると、緋音は少し疲れたように気怠(けだる)そうに、軽く溜息をついてから、歩き出す。
緋音は珀英を見向きもせずに真っ直ぐにエレベーターに向かう。
珀英はその後を、慌てる様子もなく、緋音の荷物を全部持って、するりとついていく。
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