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 だが次の瞬間、目的のものを取り出した寛希は、箱を乱雑においていたのであった。 「おい!」  亮介は思わず叫んでいた。  突然の大きな声に、寛希はビクリと肩を震わせた。亮介を見つめる視線には、少し恐怖が混じっている。 「な……何?」 「使ったものは元の場所に戻せよ。……まあ、散らかってるからどうしようもないかもしれないけど」 「ごめん……。えっと、青木くんだっけ? いつもここにいるよね?」 「あぁ。先輩たちが片付けないのが気になって整理してる」 「まだ入ったばかりなのに自主的に動いててすごいなって思ってて、俺も動きたくなっちゃった」  今までに見たことのない柔らかな笑顔、寛希はそんな表情をしていた。  きっと本心で言っているのだろう寛希の言葉に、亮介は心の中がぽかぽかとしてきた。  同時に、見た目だけで寛希のことを客寄せパンダだと思っていた自身に申し訳なさが湧き出してきた。口に出さなかったとはいえ、先ほどの会話に態度が出ていたかもしれない。 「ねぇ、青木くん。よかったら俺も片付け手伝ってもいいかな?」 「んっ、助かる。それと、その呼ばれ方だとめっちゃ他人みたいだから名前で呼んでくれね?」 「亮介……だよね。分かった。俺のことも寛希って呼んで」 「おう。んじゃ、奥の方手伝ってくれよ、寛希」  ほんの少しとも言える会話で、亮介は一気に距離が縮まって壁が完全に崩壊した気分になった。きっと寛希が醸し出している雰囲気が、彼と話しやすくするものだろうと思った。

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