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考えていたからやって来たわけではないけれど、心の準備が全くできていない中で目の前にいられるのも困る。
「どうしたんだよ、亮介」
気付けば亮介の横には寛希が立っていた。そして次の瞬間には、寛希の腕が亮介の肩に回されていた。
慣れているはずの寛希の行動であるにもかかわらず、亮介は驚きのあまり大きくビクリと肩を震わせてしまった。
普段から慣れていること、そのはずだったのに、亮介の考え方一つで大きく変わってしまった。
「……大丈夫、亮介?」
「えっ、なっ、何とも……」
「本当に?」
じっと見つめてくる寛希の顔がやけに近い順これではドキドキしてしまっていることが伝わってしまう。
震える呼吸をなんとか抑えつけ、亮介はそっと寛希から視線を逸らす。
もうこれ以上寛希に視線を向けることはできない。可能であれば早く離れてほしい。
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