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だが、亮介の願いとは反し、寛希の腕に込められる力は増していた。
「……この前のこと、ずっと気にしてたの?」
今までずっと避けていたことを寛希の口から出されてしまった。
思わず視線を戻すと、いつになく真剣な表情がそこにあった。
「ねえ、どうなの?」
「き……気にしてなんか……」
亮介は今、顔が火照っていると確信している。嘘を言っていることは明らかに見抜かれているだろう。それでも本当のことを口にしたくはなかった
「亮介」
不意に低めのトーンで名前を呼ばれた。
寛希の左手が亮介の顎をそっと掴み、寛希の方を向かせていた。
これではまるで、これからキスをされる格好ではないだろうか。
力任せで負けることはないだろうが、亮介が寛希から視線を逸らせず、距離を大きくすることもできなかった。
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