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「っ……ご、ごめん。今の……忘れて!」
動揺している寛希は、亮介に顔を見られないようにしながら、逃げるように倉庫から去っていった。
バタン、とドアが大きく閉じた音を耳にし、亮介の意識が引き戻されていった。
「何だよ、一体……」
亮介は寛希にキスをされた。唇にキスをされた。
思ってもみなかった行為をされ、突然全身の力が亮介の中から抜けていってしまった。その場で座り込み、頭の中が上手くまとまらない。
寛希が触れた敏感な部分がとても熱い。亮介は指先で改めて確かめる。
今までになく近い距離で艶めいたことを言われ、そしてキスをされた。
亮介にとって初めてのキスが、まさか同性からされるとは思ってもみなかった。
その上嫌悪感が一切なく、亮介をここまで脱力させる魅力がまたされたいと思わせていた。
寛希の本心はよく分からないが、少なくともうっかり触れてしまったときのことを忘れていないことだけは、亮介の中ではっきりとした。
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