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「……け、亮介」
ふと、寛希が呼んでいることに気付いた。
先ほどまで距離があるところにいたが、亮介が必死に考えている間に寛希は移動していたようだ。
「ひ、寛希……」
目の前にいる人物の名をぽつりと呟く。真剣な表情をしている彼の距離がやけに近い。
だが、不思議と亮介の中に逃げようという意識は全くなかった。
そして次の瞬間には、亮介の唇に柔らかいものが触れていた。
寛希の唇だと気付いたときには、再び距離ができていた。
頬を赤らめた寛希が亮介をじっと見ている。
「……亮介。明日の夜、俺のことが嫌じゃなかったらもう一度ここに来て」
それだけ言うなり、寛希は風のように去っていってしまった。
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