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「……寛希」
亮介の存在には今気付いたらしい寛希は、硬い笑みを浮かべながら振り向いた。亮介の姿を見ても、その表情は変わらなかった。
「お疲れ、亮介。……来てくれて、ありがと」
「お、おう。寛希もお疲れ」
互いに言葉を交わし、視線が合ったところで再び固まってしまった。
寛希のことは決して嫌じゃない。そう口にしてそれを示す勇気はまだ足りない。その一歩踏み出せない状況が、余計に亮介を躊躇わせていることにようやく気付いた。
大丈夫だ、そう自分に言い聞かせて小さく息を吐く。
「あのさ……」
「あの!」
亮介が口を開いたのと同時に、寛希も口を開いていた。互いに考えていたことは同じだったらしい。
目を丸くして黙り込む。そんな状況がやけに滑稽で、どちらからともなく笑いが込み上げてきた。
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