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第7話
思いがけない言葉に俺は目を見張ってしまった。いつも穏やかで喧嘩なんかとは無縁そうな緒崎が相手を殴る? それこそ想像もつかない信じられないような話だ。
「だってそんなの当たり前だろ? 俺の目の前で付き合ってる相手が、俺じゃない男に触られてるのなんて見たくないし、そんなの想像だってしたくないよ」
――えっ……えっ!? そ、それって……
「……嫉妬するだろ? 当然」
「お……緒崎……」
「なに?」
「おまえ、すっげえ男前だよな」
「菊池、どうしたんだよ、突然」
「そんなの言われてみろよ……間違いなく惚れ直すって……」
俺は言いながら、嬉しいやら恥ずかしいやらドキドキするやらで、まともに緒崎の顔を見られなくなって俯いた。頬が火照ってすごく熱くなっているのを感じる。いや……頬だけじゃない、なんだか全身が熱くて堪らなくなってきた。
「菊池……そんな可愛い事言われたら……」
ふわりと人の動く気配がして、次の瞬間、俺は緒崎に抱き締められていた。
「ケーキ食うまで我慢しようと思ってるのに……もう、煽るなよ」
緒崎はそう言って俺の顔を上に向けるとキスしてきた。
「ケーキ、後でもいい?」
堪えきれない様子でそう尋ねる緒崎に、俺はちらり、とテーブルの方へ視線を向けてから答える。
「……鍋の締め、まだ食ってないんだけど」
「色気より食い気かよ? 菊池ってばムードねえな」
緒崎は怒るでもなく、呆れた顔で苦笑している。
「で? ムードのない菊池くんのご希望は?」
「やっぱりそこは……」
「うどん?」
「……だよな」
俺たちは顔を見合わせて笑った。
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