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ご不満な人たち
「え?たいが…まさか行くの?」
うたは病室に着くなりベッドに降ろされ、不満そうに呟いた。
「えー…そりゃ、まあ…早く記録あげて申し送りしないと終業になっちまう」
「帰らないでよ、たいが」
「弱ったな…。また明日来るから」
涼木は後ろ髪をひかれる思いだったが、うたを残しステーションへと引き上げた。
ステーションへ帰ると紫藤がセンターテーブルに居座っていた
「え?紫藤先生…」
「なんです?」
「いまここにいるならアフターケアさぼらないでやってあげてくれても…うた、俺が処置2行った時にはすでに泣きじゃくってましたよ?」
「そうそれで?それはあなたたちでもできる。私は私にしかできない仕事をしたいので」
「だけど!」
涼木は紫藤に対する不満が爆発しそうだった
「お姫様抱っこで病室に帰れるくらい仲良しになったのなら、なおのこと任せます」
本当はうたが心配でステーションで待っていた紫藤だったが、ことのほか幸せそうなうたと涼木を目撃し嫉妬の感情を抱き、不満に感じ冷たい口調で涼木に指示した。
しかし、
涼木も負けじと丁寧ではあるが声を張り上げた
「処置後数分でいいから構ってあげてください。ただでさえ不安定なのにうたの心が保たなくなるのが分かりませんか!」
「…っ」
紫藤は傷ついた。
でも、言い返せず頷いた
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