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サービス夜勤

サービス残業ならぬサービス夜勤… こんなんバレたら…あ〜、怖いなぁ てか、明日の日勤…うわ、きっつー… 考えたくない イライラしながらも涼木はうたの部屋の前に着くと、無理矢理笑顔を作って両頬を叩き気合を入れた 「よし…」 扉を開けるとうたがベッドの端に座りぐずぐずと鼻をすすりながらうつむいていて、 床には本や枕が散乱し、さっきまで暴れてました〜って様子が見てとれる …なんつーか負のオーラがすごい 「うぐ…っう…ふ…」 「うた?どうした」 「うぇ…たいが?」 「うん」 「ふぇ…たいがぁ」 顔をあげてうたは両手をひろげた 「はいはい」 かわいいやつ… イライラはするけど、こういうの弱いな 涼木はうたを抱きしめて背中をトントンと叩いた うたはひろげていた手を涼木の腰にまわし涼木の体に顔を埋めた 「今日だけ特別な?夜勤の周防先輩困ってたから。次は夜勤じゃないのに呼び出しは勘弁してくれよ?」 「ん…ごめん…なさ。だって…さみしい。家じゃおとと寝てたから」 「弟?妹?」 「弟。トントンってしてあげると喜んで寝るんだ。いまどうしてんだろ」 「お母さんがいるだろ?」 「母さん…看護師。夜勤でいないこと多いから」 「お父さんは?」 「いるけど…好きじゃない」 「そっか。うたもトントンしてやったら寝る?」 「うん」 「分かった。横になりな」 「たいがも寝て?」 「え?寝ろって?ここで?」 やばい展開だろ?いまはまだおにーちゃんに甘える弟くんな感じだけど…好きになったらどうしてくれる!? まずい…お互いにまずい 「だめ?」 う…負けた 「分かった」 涼木は根負けしてうたの横に入った。 「注射したとこ痛くない?」 「痛い…けど反対側だから大丈夫」 「ならよかった。あんまり痛い時とか寝れない時は言えな?先生いなくてもちゃんとあらかじめ処方出てて薬出せるから」 「うん。たいが…あのさ、一回家に帰れない?」 「は?」 「おとにさよならしてない。きっと今頃泣いてる。だから…」 「かけあってみるよ。すぐには無理だけど落ち着いたらな」 「うん」 「ほら寝な。オンチだけど子守唄歌うか?」 「歌って」 「ねむーれねむーれ…はーはのむねーに」 「本当にオンチだし。ははっ」 うたはようやく表情をやわらくし、眠る体勢に入っていった

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