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涼木とうたのいま

涼木は翌朝、うたに揺すられて目を覚ました。 「おはよう、たいが。夕べはありがとう」 ちょっとまぶたが腫れてるけど、表情は良さそうだ。よかった 「おはよう、うた。寝れた?」 「うん。少し」 「朝ごはんちゃんと食べような?あんまり食べないと紫藤先生、あの人たぶん栄養点滴出すよ?下手したら鼻から栄養の液体流す用のチューブ入れられるから。あれ、痛いらしいぞ」 脅しは卑怯だと思うけど、そうなると間違いなく押さえ要員にされるし泣きながら処置される光景を見たくない。 「う…それはいやかも。でも食欲ない」 「あーんって介助してやったら食べる?」 「恥ずかしいよっ」 「そっか?それなら俺、もう行くけど平気?」 「うん。大丈夫」 「じゃあな。また出勤したら来るから」 涼木はうたの頭を撫でてまだ薄暗いステーションへと戻った。 「おぅ、おつかれ。これ、あまりもんやけど食べりぃ、うまいで」 周防は菓子パンとコーヒー牛乳を涼木に渡した 「あ、ありがとうございます」 「こちらこそおおきに。ほんま助かったわ」 「えと…おつかれさまです。ちょい更衣室で休んでからまた来ます」 この先輩…この後、師長になる…ってのはまた別の話 そんな感じでサービス夜勤は終了した。 やっぱりサービスとはいえど…夜勤は好きじゃない ちなみにうたはこの後もよく懐いていて、退院後もちょくちょく会って…飲み仲間。 その縁で3年前に俺の妹と結婚して義理の弟になった。 「たいが義兄さん。おとは元気になった?」 仕事終わりのうたがおとに面会に来た。 「ああ」 「よかった。ちょっと見たらすぐ帰るけど、頼むね」 「頼まれなくてもちゃんと面倒みるって。しかしうたさ、面会来てもすぐ帰るな?ゆっくりしていけば?」 「んー会いたくたくないんだよね、あの人に」 「ロンパースの礼、直接言ったら喜ぶと思うけどな」 「考えとく」 「ね、たいが義兄さん結婚は?」 「まだしないかな」 「義兄さんが結婚となると…みんな参列するよね?そんときは会わないとなんだよね」 「びっくりするだろうなみんな。おとはまだ俺と家で5回も会ってないからか俺が義兄って認識ないのかみんなに言いふらしてる感じもないし、俺も言ってないから」 「それで義兄さん今日は夜勤?」 「そ。孤独で萎えるよ」 「じゃあおとと寝てあげて?」 「かおるがなぁ…」 「かおる?」 「かわいがってんだよ、おとのこと」 「へぇ?なら、おともさみしくなくていいね」 「だな。またなうた」 手を振り涼木はステーションの奥へと消えた

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