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早朝採血3

「う〜…なんか気持ち悪い〜!もうやだぁっ!ゆっくりすぎっ何分かかってるの?いっつもいつもっ!」 「興奮すんなって。2分はかけないと副作用出んの。すでに気持ち悪いんだろ?我慢しろ」 「ねぇ終わろうよ涼木さん、全部いれなくてもそれきっと大丈夫だから」 ゆきは痺れを切らしてジタバタとベッド上で動きだした。 その表情は本当に気持ち悪そうではあるが、涼木は注入を続けた。 「大丈夫じゃないからやってんの。ただでさえホルモン値ガタガタで意欲低下が著しいのに貧血まであるんだから」 「そんなにゆきってやばいの?」 それまで黙って様子を見ていたこころが心配そうにゆきを見つめながらゆきの頭を数回撫で、涼木に尋ねた。 「ごめん。詳しいことは言えない。けどやばいことは確かだ」 「こころ…助けて。このままじゃオレ穴ぼこだよ?」 「手握るくらいしかできないけど応援する」 こころは撫でていた手を下ろし両手でゆきの手をぎゅっときつく包み込んでなだめようとしたが、ゆきは不満そうに 「えー一緒に逃げようよ」 脱走を誘った。 「おいおい脱走を誘うなよ。ったく…しょうもないこと考えるな。注射おしまい」 涼木は針の羽を止めていたテープを剥がし、針を抜き 「今日は紫藤先生どうすんのか分かんないけど、くれぐれも逃げるなよ?」 ゆきに釘を刺すと、注射をした部分に絆創膏を貼り付けた。 「ごめんなさーい。でもさ、逃げたらどうなる?」 「一斉捜索されて担当医にお仕置きされるだけだ」 「お仕置き!?」 「されたいなら逃げな?おしりぺんぺんじゃ済まないほど痛ーい処置されるけどな」 いじわるく涼木は口の端をあげて笑い、両手を差し伸べ2人の頭に手を置き髪がぐしゃぐしゃになるほど撫でた。 「2人とも朝から頑張った。えらいっ!じゃあな」 何をされるんだろう? 2人はビクビクと怯えながら、部屋から出ていく涼木の背中を見送った。

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