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由宇 発熱

「…う…この寒気…」 うわ…これって熱? マジ…勘弁。 翌朝、由宇はガチガチと体を震わせながら布団にくるまった。 熱のせいでぼんやりとしていると人影が見え、ひんやりしたものが額に触れた 「あかん…由宇くん、熱出とるやろ?」 周防が自分の額と由宇の額を交互に触り、心配そうに由宇に声をかけた。 「周防…さん?」 「なんで夜勤の看護師に言わんのや?昨日言われたやろ?熱っぽかったら言いって。まあええわ。熱測るで?」 「ごめん」 「謝らんでええ。それより辛いやろ?」 「寒い…」 「後で電気毛布持ってきたる」 「腹痛い…」 「痛い?熱、38度越えとんな。腹見せてや?足曲げて」 周防は由宇の腹を押した。 張り感が強い 「由宇くん、昨日検査後おしっこしたやろ?そっから何回出た?最終何時?」 「22時に1回。なんか出すときすっごい痛くて…膀胱炎みたいな感じ」 「まずい…10時間経っとるやん。ちょっと横向いてや」 「え?」 「おしり触らんから。ちょっと失礼するで?」 周防はトントンと由宇の両腰を叩いた 「う〜っっぁ…」 「響く?」 「うん」 「分かった。先生、確認してくるわ」 しばらくすると瀬谷とともに電気毛布を持った周防が現れた。 「寒気とれるまであっためたるな。で、先生来てくれたから診てもらうで?さっきのトントンもう一回させてな?」 「痛い…」 「悪いね。少し我慢だよ由宇」 「う〜っっ痛い」 「うん。周防の言う通り由宇、腎臓にばい菌が入ったかもしれない」 「え?医療ミス的な?」 「そういうことが言えるならある程度元気で安心したが今晩は辛いぞ。ちょっとでも楽になるように後で点滴をするから。待っていなさい」 「分かった」 「素直やん?」 「しんどい…」 ・ ・ 「い゛っっ」 「痛いなぁ、ごめんな由宇くん」 「周防さん注射下手なわけ?なんでそんな外っかわの薄いとこ刺す?普通、肘ん中じゃね?」 「一回きりならな?これ、持続やねん。曲げても大丈夫なとこやないと。で、処置必要んなった時暴れられても弊害無いとこっちゅうとここになんねんな。それか足」 「足!?」 「せやで?あんよにする?痛いで」 「嫌です…」 「せやろ?だったら黙って待っとりぃ」 「分かった」 「よし…入ったで」 周防は立ちあがろうとしたが、つんのめった 「わっ…え?」 「…ないで」 「由宇くん?」 「行かないで」 「あかんって。これ片付けてこな」 「頼むよ。1人にしないで」 「甘えんぼやな?行ったら泣くん?」 「泣く」 「そんならおったらなあかんな?寝るまでおったる」 「先輩に怒られない?」 「俺の看護観に文句つけるやつは先輩だろうとぶっ飛ばすからええ。べったり寄り添う看護も俺はありやと思うねん。他の科やと業務に追われてそうはいかん現状やけどな?」 「周防さん強い。将来大物になりそう」 「んー…どうやろな?明日のことも分からんのに将来とか未知やわ。由宇くんかて将来言われても分からんやろ?」 「うん」 「お話しおしまいな?寝り?」 「ん…」 周防は約束どおり由宇が寝るまでそばについていた。

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